アーガイル公爵

アーガイル公爵：スコットランドを代表する名家の歴史

アーガイル公爵は、イギリス貴族の爵位の中でも特に歴史と伝統を誇る称号です。その起源はスコットランド西部に勢力を誇ったキャンベル氏族に遡ります。キャンベル家は、スコットランドの氏族社会において大きな影響力を持つ名家で、代々、アーガイル地方を拠点として繁栄しました。

キャンベル家の隆盛：地方豪族からスコットランド貴族へ

キャンベル家の歴史は古く、その起源は古代王家の女系子孫にまでさかのぼると伝えられています。14世紀には、サー・ニール・キャンベルがロバート1世の側近として台頭し、マリー・ブルース（ロバート1世の姉）との結婚を通じて地位を高めました。その後、ニールの息子コリン・キャンベルはアーガイル地方に広大な領地を与えられ、キャンベル家の基礎を築きました。

コリン・キャンベルの曾孫にあたるダンカン・キャンベルは、1445年に「キャンベル卿」に叙せられ、初めてスコットランド貴族の称号を得ました。その後、ダンカンの孫コリン・キャンベルは、戦略的な婚姻によって西部クラン最大の勢力となり、「マッカラン・モア（偉大なキャンベル）」と呼ばれるようになりました。1457年には「アーガイル伯爵」に叙せられ、さらに1470年には「ローン卿」の称号も得ました。彼はスコットランドの中央政界においても重要な役割を果たし、大法官や法院長などを歴任しました。さらに1488年には、ジェームズ3世廃位の軍に加わり、スコットランドの歴史に大きな影響を与えました。

続くアーガイル伯爵家は、スコットランドの宗教改革やイングランド内戦といった激動の時代を生き抜き、その過程でプロテスタント信仰を支持したり、イングランド議会派や王党派に転じたりするなど、複雑な政治的立場を取ってきました。中でも、8代アーガイル伯アーチボルド・キャンベル（1607-1661）と9代アーガイル伯アーチボルド・キャンベル（1629-1685）は、それぞれ清教徒革命や王政復古といった大きな歴史的転換点の中で重要な役割を演じ、その生涯は劇的なものでした。

アーガイル公爵の誕生とキャンベル家の絶頂期

1701年、10代アーガイル伯アーチボルド・キャンベルは、名誉革命においてウィリアム3世を支持した功績により、「アーガイル公爵」に叙せられました。これはキャンベル家の歴史における大きな転換点であり、それまで地方貴族だったキャンベル家が、スコットランドの有力貴族へと躍り出た瞬間でした。

2代アーガイル公ジョン・キャンベル（1680-1743）は、イングランドとスコットランドの合同交渉の代表を務め、3代アーチボルド・キャンベル（1682-1761）の代にはアーガイル公爵家の影響力はスコットランド全土に及ぶほどになりました。しかし、その影響力ゆえに中央政府との対立も少なくありませんでした。

その後もアーガイル公爵家は、軍人や政治家として活躍し、1892年には8代アーガイル公ジョージ・キャンベルが連合王国貴族としてのアーガイル公爵位も獲得しました。20世紀には、第二次世界大戦に参戦した者もいました。

グレンコーの虐殺：アーガイル家の暗い影

アーガイル公爵家の歴史において、グレンコーの虐殺は暗い影を落としています。1692年、ウィリアム3世の命を受けた10代アーガイル伯は、グレンコーのクラン・マクドナルド家を虐殺しました。この事件は、アーガイル公爵家の輝かしい歴史に暗い一章を加えるものとなりました。

現在のアーガイル公爵

現在のアーガイル公爵は13代トーキル・キャンベルです。彼はキャンベル氏族長としての役割を担いながら、ビジネスの世界でも成功を収めています。インヴァレリー城は、現在もアーガイル公爵家の居城として大切に受け継がれています。

まとめ

アーガイル公爵位の歴史は、キャンベル家とスコットランドの歴史を深く理解する上で欠かせないものです。その栄光と苦難の歴史は、未来への教訓と、豊かな歴史遺産を残しています。アーガイル公爵家は、スコットランドの歴史において重要な役割を担った一族であり、その名は今もなお人々の記憶に刻まれています。

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