アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡

アーサー（または大英帝国の衰退ならびに滅亡）

ザ・キンクスのアルバム『アーサー』は、1969年にリリースされ、イギリスの音楽シーンに深い影響を与えた。この作品は、オリジナル・メンバーのピート・クウェイフが脱退し、代わりにジョン・ダルトンが加わった後に発表された最初のアルバムでもあります。前作『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』が商業的に失敗した後のバンドは、この作品を新たなスタートと位置付けていました。

本アルバムは、当初はグラナダ・テレビのためのドラマとして構想されていましたが、その計画は実現しませんでした。このため、独自のコンセプト・アルバムとして完成されました。レイ・デイヴィスとジュリアン・ミッチェルによる脚本に基づき、主人公アーサー・モーガンの物語が展開されます。アーサーは、扶養する家族のため、オーストラリアへの移住を決意する労働者階級の男性です。彼の苦境を通じて、第二次世界大戦後のイギリス社会の縮図が描かれています。

アルバムの中では、イギリス帝国の歴史、二つの大戦を経て现代の小市民がどのように影響を受けるのかがテーマになっています。特にレイの独創的な視点が光り、シニカルでありながらも愛情深い描写が特徴的です。選曲の中には「ヴィクトリア」や「ブレインウォッシュド」といった楽曲があり、これらはロックンロールへの回帰を示しています。

『アーサー』はリリース当初、アメリカで好意的に受け入れられました。その後このアルバムは、ザ・フーの『トミー』と同年のコンセプト・アルバムの重要な例としてしばしば比較されることになります。また、「ローラ」のヒットはアメリカ合衆国での活動禁止が解除された後の、アメリカツアーを可能にした要因でもありました。

トラックリスト

アルバムの収録曲は次の通りです。特記がない限り、すべての曲はレイ・デイヴィスが作詞作曲を担当しています。

1. ヴィクトリア - Victoria 3:40
2. イエス・サー・ノー・サー - Yes Sir, No Sir 3:46
3. サム・マザーズ・サン - Some Mother's Son 3:25
4. ドライヴィン - Drivin' 3:21
5. ブレインウォッシュド - Brainwashed 2:34
6. オーストラリア - Australia 6:46
7. シャングリ・ラ - Shangri-La 5:20
8. ミスター・チャーチル・セッズ - Mr. Churchill Says 4:42
9. マリーナ王女の帽子のような - She Bought A Hat Like Princess Marina 3:07
10. 若くて純真な時代 - Young And Innocent Days 3:21
11. ナッシング・トゥ・セイ - Nothing To Say 3:08
12. アーサー - Arthur 5:27

ボーナス・トラック

• - プラスティック・マン - Plastic Man (D. Davis) 3:02
• - キング・コング - King Kong 3:21
• - ドライヴィン - Drivin' 3:11
• - 母の腕の中に - Mindless Child Of Motherhood 3:15
• - ディス・マン - This Man He Weeps Tonight (D. Davis) 2:40
• - プラスティック・マン - Plastic Man (D. Davis) 3:00
• - 母の腕の中に - Mindless Child Of Motherhood 3:08
• - ディス・マン - This Man He Weeps Tonight (D. Davis) 2:38
• - マリーナ王女の帽子のような - She Bought A Hat Like Princess Marina 3:05
• - ミスター・シューメーカーの娘 - Mr. Shoemakers Daughter (D. Davis) 3:07

このアルバムは、ザ・キンクスにとって重要な転機であり、彼らの音楽的な進化を示すものとなっています。

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