アーサー・シュスター

アーサー・シュスター (1851-1934) は、ドイツで生まれ、イギリスで活躍した物理学者です。彼の研究は、分光学、電磁気学、そして光学と多岐に渡り、特に太陽コロナや恒星のスペクトル、周期分析の応用において顕著な業績を残しました。

シュスターは裕福な貿易商の家庭に生まれました。彼はフランクフルトとジュネーブで教育を受け、その後イギリスのオーウェン・カレッジ（後のマンチェスター大学）で分光学の研究を始めました。ハイデルベルク大学でグスタフ・キルヒホフのもとで研鑽を積んだ後、オーウェン・カレッジに戻り、無給の助手として研究を続けました。実家の援助により研究に必要な機器や材料を確保し、精力的に研究活動を進めました。1875年には、タイでの日食観測隊に参加し、日食コロナのスペクトル観測に携わっています。

マンチェスターに戻ったシュスターは、電磁気学の研究に力を注ぎました。ケンブリッジ大学のキャヴェンディッシュ研究所で、正式な研究員ではない立場ながらも5年間研究を行いました。その後、オーウェン・カレッジで応用数学の教授、そして物理学の教授として活躍します。1900年には新しい研究所を設立し、マンチェスター大学における物理学研究の基盤を築きました。1907年には健康上の理由と国際的な活動への参加を理由に教授職を退きましたが、彼の後任となったアーネスト・ラザフォードの活躍もあり、マンチェスター大学は世界屈指の物理学研究拠点へと成長しました。

シュスターの研究成果は多大な貢献をもたらしました。分光学の分野では、リュードベリの法則を独立して発見し、チャンドラセカールと共に恒星大気の吸収スペクトルの理論を構築しました。また、周期分析を様々な分野に応用し、地震発生の周期説を否定する研究や、太陽黒点変動の周期の分析などを行っています。さらに、経済学者ウィリアム・スタンリー・ジェヴォンスの景気循環と太陽黒点周期の関連性に関する研究にも貢献しました。

シュスターの学問的貢献は高く評価され、1879年には王立協会フェローに選出されました。その後も、ベーカリアン・メダル（1884年、1890年）、ロイヤル・メダル（1893年）、ランフォード・メダル（1926年）、そしてコプリ・メダル（1931年）など、数々の栄誉ある賞を受賞しました。これらの賞は全て、イギリス王立協会から授与されたものです。

アーサー・シュスターは、研究活動、教育活動を通じて、物理学の発展に多大な貢献を果たし、マンチェスター大学を世界的な物理学研究の中心地に押し上げた重要な人物と言えるでしょう。彼の多方面に渡る研究業績と、後進の育成に対する貢献は、現代物理学に今もなお影響を与え続けています。

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