アーチャー対戦車自走砲

アーチャー対戦車自走砲：待ち伏せの達人

第二次世界大戦下、イギリス軍は強力な17ポンド対戦車砲を保有していましたが、そのサイズと重量から機動性に課題がありました。そこで、既存のバレンタイン歩兵戦車の車台を利用し、17ポンド砲を搭載した対戦車自走砲、アーチャーが開発されました。

独特の車体設計

アーチャーの最大の特徴は、主砲を車体後部に逆向きに搭載している点です。バレンタイン戦車の車体後部にオープントップ式の戦闘室を設け、17ポンド砲を後方に向けて配置することで、全長を短縮し、低重心を実現しました。砲塔は存在せず、単純な戦闘室構造となっています。

当初、後方配置の主砲は運用上の制約があると考えられていましたが、実際には敵攻撃後、車体の向きを変えることなく素早く移動できるという利点があることが分かりました。この特徴と低重心、そしてオープントップの戦闘室構造から、アーチャーは待ち伏せ攻撃を得意とする対戦車自走砲として高い戦闘能力を発揮しました。なお、射撃時に操縦手が車外に退避する必要はありません。

生産と運用

アーチャーの生産は1943年頃から開始され、1944年10月には西部戦線とイタリア戦線に配備されました。戦争終結までに655両が生産されました。アーチャーは自走砲として分類され、王立砲兵連隊が運用しました。

戦後も、中東に駐留していた英連邦軍の一部アーチャーはエジプト軍に引き渡され、第二次中東戦争でイスラエル軍機甲部隊に大きな損害を与えました。ヨルダンにも36両が供与されました。現在、いくつかのアーチャーが博物館で保存展示されています。

派生型と試作車両

アーチャーを基に、主砲を25ポンド野戦榴弾砲に変更した試作車両も存在しました。これは、既存の25ポンド自走砲ビショップが車高が高く、車内空間が狭苦しいという欠点があったことから、アーチャーの車体を流用したものです。しかし、ビショップと同様、仰角が制限され射程が短かったため、量産には至らず、試作のみで終わりました。主砲を搭載せず弾薬搭載量を増やした弾薬運搬車型の構想もありましたが、実現しませんでした。

ゲームへの登場

アーチャーは、様々なミリタリーゲームに登場しています。ゲームによっては、史実とは異なる砲口方向や性能で登場する場合もあります。例えば、『World of Tanks』では、史実と逆に砲口側へ前進し、後進の方が速いという個性的な車両として登場します。また、『War Thunder』では、史実どおり砲口と逆向きに前進する車両として登場します。

まとめ

アーチャー対戦車自走砲は、バレンタイン戦車の車体を巧みに利用し、17ポンド対戦車砲の威力を最大限に引き出した傑作と言えるでしょう。その独特の設計と運用方法は、第二次世界大戦における対戦車戦闘に新たな側面を加えました。後方配置の主砲という大胆な発想は、待ち伏せ攻撃において高い効果を発揮し、戦場で活躍したアーチャーは、現在でも多くの人々を魅了する存在です。その独特なシルエットと、ゲームにおける存在感も、アーチャーを語り継ぐ上で重要な要素となっています。

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