アート・クローキー

アーサー・「アート」・クローキー（Arthur "Art" Clokey, 1921年10月12日 - 2010年1月8日）は、アメリカ合衆国の革新的なアニメーション作家であり、特に粘土を用いたクレイアニメーションやストップモーション技法の分野における先駆者として知られています。

彼のキャリアは、南カリフォルニア大学での学びから始まりました。ここで、映像表現の大家であるスラヴコ・ヴォルカピッチの影響を深く受け、後の作品に繋がるインスピレーションを得たとされています。この学びを背景に、1955年にはクレイアニメーションの実験的な短編作品『Gumbasia』を発表しました。これは、色彩豊かな粘土の塊が様々な形に変化し、動き回る様を描いたもので、その後の彼の代表作へと発展する基礎となりました。

『Gumbasia』での試みを発展させる形で、クローキーは妻のルースと共に、生涯にわたる代表作となるキャラクター、ガンビーを生み出しました。全身緑色で柔軟な体を持つガンビーと、その愛らしい相棒である赤色のポニー、ポーキーは、すぐに視聴者の心を捉えました。彼らはまず、子ども向け番組「ハウディ・ドゥーディー」の中で紹介され、その後独立したシリーズ「アドヴェンチャーズ・オブ・ガンビー」として制作され、テレビの人気者となりました。素朴ながらも想像力豊かな物語と、粘土のキャラクターがユニークな動きを見せるクレイアニメーションは、多くの子どもたちに愛されました。

テレビでの成功後もガンビーの人気は衰えず、1980年代には新たなシリーズが制作されるなど、世代を超えて親しまれ続けました。この頃には、人気コメディアンのエディ・マーフィが、自身のレギュラー番組「サタデー・ナイト・ライブ」の中でガンビーのパロディを演じ、キャラクターがさらに広い層に認知されるきっかけとなりました。そして1990年代には、長編映画『Gumby: The Movie』が公開されるなど、メディア展開も広がりを見せました。

ガンビーシリーズと並んで、クローキーのもう一つの重要な作品として挙げられるのが『デイビー・アンド・ゴライアス』です。これは、アメリカのルーテル教会からの資金提供を受けて制作された作品で、少年デイビーとその賢い牧羊犬ゴライアスを通して、キリスト教の教えや倫理的なテーマを優しく、分かりやすく描いています。この作品もまた、クレイアニメーションが持つ独特の温かみと表現力を活かした、心に残るシリーズとなりました。

アーサー・クローキーは、そのキャリアを通じて、クレイアニメーションという手法の可能性を追求し、多くの人々に夢と創造性を提供しました。彼のクレイアニメに対する貢献は広く認められており、彼の没後、2011年10月12日には、彼の功績と90回目の誕生日を記念して、検索サイトGoogleのトップページロゴがガンビーのデザインに変更されるという出来事もありました。これは、彼と彼の創造したキャラクターがいかに多くの人々に記憶され、愛され続けているかを示すエピソードと言えるでしょう。アーサー・クローキーは、クレイアニメーションという芸術形式を確立し、後世のアニメーターに多大な影響を与えた偉大なパイオニアです。

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