イエダニ

イエダニ（家蝨）について

イエダニ（学名: Ornithonyssus bacoti）は、主にネズミを宿主とする小型のダニであり、人間にも被害をもたらすことで知られています。このダニの存在は、1913年にエジプトの船内のネズミから初めて確認され、その後、世界各地に広がることとなりました。特に、日本では大正時代に紹介され、高い被害が報告されています。

特徴

イエダニは、雌成虫で体長おおよそ1mmの小さな生物です。体型は楕円形で扁平、色は白から淡褐色ですが、吸血を行った後は腹部が膨らみ、赤黒い色に変わります。背面は特有の背板を持ち、長さと幅の比率が約2.7で、長い毛が生えています。また、体表は剛毛で覆われ、鋏角は細長く鋏状になっています。

分布

イエダニは世界中に分布しており、日本には大正時代に導入されたと推測されています。その主な宿主であるクマネズミは、インド由来で西へと広がり、ヨーロッパ全域に浸透したと考えられています。日本では、1923年の関東大震災によって持ち込まれた毛布と共に広がったという話もあります。戦後、衛生環境の改善によりその数は減少しましたが、都市部でネズミの発生が再び増加したことから、被害も再発している状況です。

生態

イエダニは吸血性であり、クマネズミやヒトの血を吸うことが主な行動です。生活史は卵、幼虫、若虫（第一、第二）、そして成虫の5段階に分かれています。吸血は成虫と若虫が行い、特に雌は宿主から吸血後に巣で卵を産みます。孵化時間は1-2日程度で、成虫になるまでの期間は約11-16日です。

類似種

イエダニに似たダニには、鳥類に寄生するトリサシダニやワクモなどがいます。外見は似ていますが、サイズや毛の数などで区別が可能です。特に、トリサシダニはイエダニに非常に類似しており、識別が難しいことが多いです。

被害と対策

イエダニによる被害は、特に人間の肌に刺されることから生じ、痒みや発疹を引き起こします。このダニはクマネズミと共に生息しており、餌を求めて巣を離れることで人に被害を及ぼします。被害が多いのは、おもに皮膚が柔らかい部分に集中します。症状はアレルギー反応によって変わり、通常1週間ほどで回復します。

イエダニを駆除するには、まずネズミの駆除が不可欠です。死骸や巣を取り除いた後、周囲に殺虫剤を散布することが効果的です。発見が難しい場合が多いですが、燻煙などの方法でダニの発生を抑えることができます。

まとめ

イエダニは、かつては広く知られていた存在でしたが、現在ではあまりその名は聞かれなくなりました。しかし、依然として都市部での衛生害虫としての存在感は否めません。人間の生活空間に潜むリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

もう一度検索