イギリスにおける死刑

イギリスにおける死刑制度の歴史

イギリスでは死刑制度が長い間存在し、さまざまな歴史的背景を持っています。1969年にイングランドとウェールズで死刑が廃止され、その後1973年に北アイルランドでも廃止が決定されました。完全に死刑が廃止されたのは、1998年のことです。

歴史的背景

イギリスにおける死刑制度の廃止の考え方は、古くから存在しており、特にトーマス・モアの時代にその思想が広まりました。16世紀には、数多くの罪に対して死刑が適用されており、特に政治的な動乱によって多くの人々が処刑されました。例えば、1553年にはメアリー1世の即位を妨げた者たちが死刑にされ、1679年にはスコットランドでの反乱に関与した約1200人が同様の運命を辿りました。

1723年には、ブラック法によって窃盗や紙幣偽造など50以上の種類の犯罪に対し死刑が科されました。このように厳罰化された背景には、犯罪を減少させるという支配階層の信念と、自らの利益を守る意図があったとされています。1700年代には、死刑にされる犯罪が増加し、1815年には288にまで達しました。特に窃盗や放火、暴力犯罪には厳罰が課され、一般庶民は主に絞首刑で処刑される一方、貴族には斬首刑が適用されるなどの違いも存在しました。

死刑廃止に至るまでの変遷

19世紀に入ると、死刑の適用範囲は徐々に狭まっていきました。1823年には反逆罪と殺人に限定され、1866年には公開処刑が廃止されるなどの改革が進められました。また、1908年には16歳未満、1933年には18歳未満への死刑が禁止され、1931年には妊婦への死刑も認められなくなりました。

戦後になると、死刑廃止を求める声が高まり、1948年には死刑廃止法案が提出されました。しかし1957年には、特定の殺人に対して死刑が復活する法律が施行され、1965年には死刑執行を5年間停止する決議が可決されました。次第に冤罪が疑われる事例が報じられる中、死刑制度への反対が強まり、1969年に正式に廃止されることとなったのです。

死刑廃止の理由

イギリスで死刑が廃止された理由には複数の要因がありました。まず、「犯罪抑止としての効果が確認されなかった」という点が挙げられます。さらに、「多くの殺人は精神的な問題を抱えた者の行為で、責任が問えない可能性が高い」、「誤判の危険性」といった実情がありました。死刑自体が時代遅れとされ、法的および倫理的な見地からその存続が疑問視されたのです。

死刑廃止後の状況

廃止後も、死刑復活の声が一部で上がりましたが、特に1970年代にはその動きが見られました。1980年代にはさらなる死刑廃止を求める安定した圧力が高まり、イギリス国内での死刑制度に対する支持は弱まりました。1998年に国家反逆罪および戦争犯罪の死刑も廃止されたことにより、イギリスの死刑制度は完全に消滅したのです。

イギリスにおける死刑制度の歴史は、社会的背景や複雑な政治的要因と密接に関連しており、その変遷は重要な社会問題を映し出しています。

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