イギリスの通行権

イギリスの通行権（ライト・オブ・ウェイ）

イギリスにおける通行権、すなわちライト・オブ・ウェイ（Right of Way, RoW）とは、公衆が特定の土地を自由に通行できる権利です。これは、国有地や私有地の区別なく適用され、誰もが享受すべき基本的な権利と捉えられています。ただし、通行が許可されるのは、権利として認められた特定の通路に限られます。

この権利は、古くから公衆の通路として利用されてきた土地は、現在も引き続き誰でも自由に通行できるべきという考えに基づいています。権利通路は、私的権利によるものと区別するため、特に公共権利通路（Public Right of Way）と呼ばれることもあります。

各法域における権利通路の規定

権利通路を規定する法律は、イングランドおよびウェールズ、スコットランド、北アイルランドの3つの法域で異なります。イングランドおよびウェールズでは、法的に指定されたもののみが権利通路として利用できますが、スコットランドでは、一定の条件を満たせば権利通路として利用可能です。

イングランドおよびウェールズ

イングランドおよびウェールズには、主に以下の権利通路が存在します。

パブリック・フットパス (Public Footpath)：歩行者専用の通路。イギリス発祥の「歩くことを楽しむための道」で、農村部を中心に網の目のように張り巡らされています。最長で160キロメートルにも及ぶものも存在し、川や丘、農場などを通過します。道しるべとして、黄色の矢印が描かれた標識が用いられます。
パブリック・ブライドルウェイ (Public Bridleway)：歩行者、乗馬者、自転車利用者が通行できる道。ただし、自転車利用者は歩行者や騎乗者に道を譲る必要があります。道しるべには、青色の矢印が使用されます。
バイウェイ・オープン・トゥー・オール・トラフィック (Byway Open to All Traffic, BOAT)：自動車やバイクを含む、あらゆる交通手段の通行が許可された道。赤色の矢印が道しるべとして用いられます。
リストリクティド・バイウェイ (Restricted Byway)：2006年に設けられた暫定的な通路で、歩行者、乗馬者、自転車などが通行できます。
* パーミッシブ・パス (Permissive Path)：地権者が一時的に公衆の通行を許可した道で、法的な通行権は認められていません。

これらの通路は、交通経路としての利用だけでなく、散歩やハイキング、サイクリングなどのレクリエーションにも利用されています。

スコットランド

スコットランドでは、過去20年間に公衆の通行に供されてきた通路は、すべて権利通路とみなされます。これらの通路は、住宅地や教会などの公共の場所を結び、目的地へのアクセス手段として機能する必要があります。イングランドおよびウェールズとは異なり、地方自治体には権利通路を示す標識の設置義務はありません。ただし、慈善団体「スコットウェイズ」が権利通路の保護・維持・管理を行っています。スコットランドでは、フットパスとブライドルウェイの法的な区別はありません。

日本のフットパス事情

日本では、イギリスを参考にした「○○フットパス」という名称の遊歩道が見られます。これらは私有地を通る場合もあり、公共性が高いですが、イギリスの通行権のように国が明確に定義しているわけではありません。近年では、協会設立の動きも見られ、観光振興や地域活性化の手段として注目されています。特に北海道には、イギリスのような牧歌的な風景が広がるため、フットパス整備が盛んです。整備や管理は、行政が主体となる場合と市民団体が主体となる場合があります。

まとめ

イギリスの通行権は、公衆が自由に土地を利用できる重要な権利です。その種類や法規制は地域によって異なり、それぞれの歴史的背景や文化的価値観が反映されています。一方、日本ではフットパスが観光資源として注目されており、地域活性化に貢献しています。通行権とフットパスは、人々の生活と密接に関わる重要な概念と言えるでしょう。

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