イギリス国鉄5形蒸気機関車

イギリス国鉄 5形蒸気機関車

イギリス国鉄の5形蒸気機関車（BR Standard 5MT）は、1950年代に製造された12タイプの制式機関車の一つであり、合計で172台が製造されました。この機関車は、ロンドン・ミッドランド・アンド・スコティッシュ鉄道（LMS）における5形蒸気機関車（通称：ブラックファイブ）の設計を基にし、1951年から1957年にかけて各種の改良を加えて生産されました。

背景

5形蒸気機関車の設計においては、著名な設計士ウィリアム・ステニアが手がけたLMSの元となる5形が起点となっています。この機関車は、1934年に製造が開始され、国有化が進む中でも1951年まで生産が続けられました。国有化後、イギリス国鉄によって新しい「標準」の蒸気機関車として、その多くの設計が近代的な要素を取り入れた形で具現化されました。

設計の革新により、5形は自動清掃灰箱や揺り火格子といった機能を備え、掃除の負担を軽減しました。この機能は、第二次世界大戦後の労賃上昇に対応するために開発されました。この機関車の設計原案は、4-6-2の車輪配置であり、当時の蒸気機関車の更新試験でも高い成績を収めていました。特に、サザン鉄道によるBulleid型のパシフィック機関車との類似点も指摘されますが、そのコストや実績を鑑みて、よりエコノミーなLMSの設計が選ばれました。

設計と製造

5形蒸気機関車の設計作業は、かつてのドンカスター工場で行われ、主にダービー工場で製造が進められました。BR標準ボイラーは、元となるLMSの設計に近いものでしたが、材料としてニッケル鋼ではなくマンガン鋼が使用され、高さが調整されたり、駆動ホイールとシリンダーボアのサイズが若干大きくなったりしました。これらの変更は、メンテナンスの効率を向上させることを目的としていました。

1951年4月には初号機の73000号が完成し、ダービー工場から30両が送り出されました。続いてドンカスター工場で42両が1955年から1957年にかけて製造され、これにより5形の生産は完了しました。

運用

5形蒸気機関車は、国有化前のLMS 5形に比べ、はるかに経済的で効率的な機関車として知られました。その運用は高速急行列車から低速貨物列車まで多岐にわたりました。特に、滑らかな加速と高い牽引力により、主に1960年代半ばまで多くの急行列車を牽引しました。ロンドンと南部の主要な都市を結ぶ路線での運行が多く、その人気は次第に確立されました。加えて、様々な地域に適した炭水車が設計され、それぞれの路線に応じた機関車配備が行われました。

また、1959年にはサザン鉄道のN15形にちなんで、20台の機関車が『アーサー王物語』のキャラクターに名付けられ、愛称がつけられました。

事故

1958年8月25日、73042号はグラスゴー発イーストボーン行き寝台列車を牽引中、信号をオーバーランし、電車と衝突しました。この事故により5名が死亡、多数の負傷者が出ました。このような事故は、5形蒸気機関車の運用史において痛ましい記録として留まっています。

バリエーションと改良案

5形蒸気機関車には、主に2つの弁装置のバリエーション（ワルシャート式とカプロッティ式）があり、運行性能にさほどの差はありませんでした。カプロッティ式は特に優れた高速走行性を示し、導入コストの高さが懸念される一方で、その性能が長期間の運用において有利であると評判でした。

保存

現在、5形蒸気機関車は5両が動態保存されており、73050号はイギリス国鉄から直接購入されました。残りの機関車はバリー島の廃車場から復元されたものです。これらの保存機関車は、イギリスの鉄道史を今に伝える重要な存在となっています。

もう一度検索