イギリス王妃・王配一覧

イギリスの王妃と王配：歴史、称号、そして戴冠式

イギリス君主の配偶者、王妃や王配は、憲法上の権力を持たないものの、長年にわたり大きな影響力を行使してきました。本稿では、イギリスの歴史における王妃・王配の役割、称号、戴冠式における儀式、そしてレガリアについて詳細に解説します。

長きにわたる献身：フィリップ王配とエリザベス王太后

エリザベス2世女王の夫であったフィリップ王配は、70年近くにわたり王配を務め、その在任期間の長さと99歳での薨去は、イギリス王室の歴史において特筆すべきものです。一方、彼の義母にあたるエリザベス王太后は101歳で崩御し、王妃として最も長寿であったものの、夫であるジョージ6世国王の崩御後にはその地位にはありませんでした。フィリップ王配の薨去後、エリザベス2世女王崩御まで王配・王妃の地位は空位となり、2022年9月8日の女王崩御後、チャールズ3世国王の即位に伴い、カミラ夫人が新たな王妃となりました。

歴史的背景：ハノーファーとの繋がりと王位継承

1707年のイングランドとスコットランドの合同以降、11組の君主とその配偶者が存在しました。1727年から1837年までの間、イギリスの君主は同時にハノーファー選帝侯（1814年以降はハノーファー国王）の称号も持ち、王妃はハノーファー選帝侯妃（ハノーファー王妃）の称号も有していました。しかし、1837年のヴィクトリア女王の即位により、ハノーファーとイギリスの君主位は分離しました。これは、ハノーファーの継承法（サリカ法）が女性による王位継承を認めていなかったためです。2013年の王位継承法改正までは、イギリスでも男性優先の相続が適用されていました。

称号をめぐる考察：王配の稀少性

全ての女性君主の配偶者は「王妃（Queen Consort）」の称号を有しますが、男性配偶者（Queenの夫）が「王配（King Consort）」の称号を有した例はありません。アン女王の夫、ジョージ・オブ・デンマークは「王配」の称号を授与されず、ヴィクトリア女王の夫、アルバート・オブ・サクス＝コバーグ＝ゴータ公子は「王配（Prince Consort）」の称号を与えられました。これは、当初「King Consort」が提案されたものの、政府によって却下されたためです。エリザベス2世女王の夫、フィリップ王配も「Prince Consort」の称号は与えられませんでした。

戴冠式：王妃の役割と例外

王妃は戴冠式に参列し、君主とほぼ同様の儀式を行います。精巧なローブをまとい、行列を歩み、聖油を注がれ、王冠を授かります。一方、男性配偶者は戴冠や聖油の儀式を受けることはありません。例外として、ジョージ4世の妻、カロリーネ・フォン・ブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュッテルは、ジョージ4世との別居により、王妃としての地位は認められたものの宮廷での地位はなく、戴冠式への参加を強制的に禁止されました。

レガリア：王冠、指輪、杖

現存する最古の君主配偶者の王冠は、1685年にメアリー・オブ・モデナのために作られたものです。20世紀初頭以降は、王妃のために新しい王冠が作られるのが通例でしたが、カミラ王妃はメアリー王妃の王冠を戴冠式に使用しました。王妃の指輪は1831年に作られ、以来王妃によって受け継がれています。王妃の杖と鳩は「公平と慈悲」を象徴し、王妃の十字架付き笏は1685年のメアリー・オブ・モデナの戴冠式のために作られたものです。

まとめ

イギリスの王妃・王配は、憲法上の権力を持たないものの、長きにわたりイギリス王室に大きな影響を与えてきました。その歴史、称号、戴冠式、そしてレガリアは、イギリス王室の歴史を語る上で欠かせない要素です。今後の王室の動向とともに、王妃・王配の役割も変化していくことが予想されます。

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