イザベラ・オブ・フランス

イザベラ・オブ・フランス：美貌と野望の生涯

イザベラ・オブ・フランス（1295年頃 - 1358年8月22日）は、フランス王フィリップ4世の娘として生まれ、その絶世の美貌は「ヨーロッパ随一」と謳われ、各国の宮廷で称賛されました。13歳頃、イングランド王エドワード2世と結婚しますが、二人の関係は長くは続きませんでした。

王室の対立とクーデタ

イザベラは、エドワード2世の寵臣であるピアーズ・ギャヴィストンと対立。ギャヴィストンは反乱により殺害され、その後エドワード2世はヒュー・ル・ディスペンサー父子を重用するようになりました。イザベラは、ディスペンサー父子による専横と、自身の立場が脅かされていると感じ、彼らへの反感を強めます。

1324年、サン＝サルド戦争勃発によりイザベラのフランス領地が没収されると、彼女はエドワード2世とディスペンサー父子との対立を鮮明にします。1325年、息子エドワード（後のエドワード3世）と共にフランスへ渡ったイザベラは、フランスに亡命していたロジャー・モーティマーと密通。モーティマーは、ディスペンサー親子に追放されていたイングランド貴族たちと結託し、エドワード2世打倒を企てます。

翌年、モーティマーと共にイングランドへ侵攻したイザベラは、反乱軍を率いて成功。エドワード2世は廃位され、幽閉中に暗殺されました。息子のエドワード3世が即位し、イザベラは摂政として国政の実権を握ります。

摂政としての支配と失脚

摂政となったイザベラは、愛人モーティマーと共に国政を掌握。スコットランドとの講和条約を締結しますが、これは国内で強い反発を招きます。また、モーティマーは権勢を拡大し、多くの貴族の反感を買い、イザベラとモーティマーは国内に敵を多く作りました。

1330年、成長したエドワード3世は、母とモーティマーの専制政治に反発。クーデタを起こしてモーティマーを逮捕、処刑させ、イザベラは政治の舞台から退きました。

失脚後の生活と最期

失脚後も、イザベラは豊かな生活を送りました。彼女は年金を受け取り、多くの召し使いや高級品に囲まれ、エドワード3世やその息子たちとも交流を続けました。晩年は、アーサー王伝説や宝石、占星術、幾何学などに興味を示したとされています。1358年、ハートフォード城で死去し、愛人モーティマーの隣に埋葬されました。

イザベラ・オブ・フランスの評価

イザベラは、その美貌と並外れた政治手腕で、イングランドの歴史に大きな影響を与えた人物です。しかし、その冷酷な一面や、愛人との不倫、クーデタによる権力掌握など、彼女の人生は常に論争の的となっています。「フランスの雌狼(She-Wolf of France)」という異名からもわかるように、彼女は恐れられ、同時に魅力的な、謎めいた存在であり続けました。彼女の生涯は、中世イングランドの政治的混乱と、女性の権力獲得の困難さを象徴する物語として、現代においても研究され続けています。

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