イスラエルとスーダンの関係

イスラエルとスーダンの外交関係は、長い歴史の中で敵対と緊張を特徴としてきましたが、2020年にアメリカの仲介により、この長年の対立関係に終止符が打たれ、両国は国交正常化へと踏み出しました。

歴史的な対立

両国の敵対関係は、特に中東戦争期において顕著でした。スーダンは、第一次（1948年）と第三次（1967年）中東戦争に参戦し、イスラエルと軍事的に衝突しました。第四次中東戦争（1973年）では積極的な戦闘参加はなかったものの、全体としてアラブ側の立場を支持しました。一方、イスラエルもスーダンの国内情勢に関与し、南北内戦中に南部の反政府勢力を支援したとされ、これが両国間の不信を助長しました。

関係改善の兆候

長年の敵対関係に変化の兆しが見え始めたのは、21世紀に入ってからのことです。2016年1月、当時のスーダン外相は、もしアメリカ合衆国がスーダンへの経済制裁を解除するならば、イスラエルとの関係正常化を検討する用意があることを示唆しました。また、当時のスーダン大統領がイスラエルに対する従来とは異なる見方を示唆する発言を行ったと報じられるなど、スーダン側からの軟化の兆候が見られました。

水面下の接触と公の動き

こうしたスーダン側の変化を受けて、イスラエル政府も関係改善の可能性を模索し始めました。2016年9月頃には、イスラエルがアメリカを含む西側諸国に対し、スーダンとの関係改善を働きかけていることが明らかになりました。同時期に、当時のイスラエル閣僚がスーダン当局者との接触や極秘訪問があったことを示唆するなど、水面下での交渉が進められていたことが示唆されました。

国交正常化への加速

関係正常化に向けた動きは2020年に加速しました。同年2月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とスーダンのアブドゥルファッターフ・ブルハン最高評議会議長がウガンダのエンテベで会談し、国交正常化で合意しました。これは両国首脳間の歴史的な接触でした。この合意後、イスラエル機がスーダン領空を通過できるようになるなど、具体的な進展が見られました。

歴史的な合意の成立

国交正常化の最終段階として、2020年10月22日にイスラエル代表団がスーダンを訪問し協議を行いました。そして翌10月23日、アメリカ合衆国のドナルド・トランプ政権の仲介のもと、イスラエルとスーダンは正式に国交を正常化することで合意しました。この合意により、スーダンはエジプト（1979年）、ヨルダン（1994年）、バーレーン（2020年）、アラブ首長国連邦（2020年）に続いて、イスラエルと外交関係を樹立した5番目のアラブ連盟加盟国となりました。アメリカ政府はこの合意を高く評価しました。

正常化の意義

この国交正常化は、両国関係に新たな道を開き、外交、経済、文化など多分野での交流・協力の可能性を生み出しました。スーダンにとっては、長引く経済危機からの脱却や国際社会との関係改善、特にアメリカによるテロ支援国家指定解除（国交正常化合意と同時に発表）という大きな利益につながりました。イスラエルにとっては、「アブラハム合意」の流れを強化し、アラブ世界との関係改善を進める重要な一歩となりました。この合意が地域全体に及ぼす影響は大きいと考えられます。

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