イスラエル国防軍の階級

イスラエル国防軍の階級

イスラエル国防軍（IDF）の階級は、陸軍、航空宇宙軍（空軍）、海軍、その他の組織で共通の名称が用いられている点が特徴です。これは、イスラエル軍の階級制度が、イスラエル建国以前の武装組織ハガナーの時代から流用されているためです。また、諸外国と比べて階級が比較的省略されており、最高階級は「ラヴ・アルーフ」（中将）で、参謀総長のみがこの階級に就くことができます。

現在の階級

イスラエル国防軍の階級は、大きく分けて士官、下士官、兵の3つに分類できます。さらに、専門士官や訓練兵といった独自の区分も存在します。

士官（クトチニム）

士官は、志願兵の中から士官育成過程を修了した者を指します。兵役期間は最低4年間（パイロットは9年間）で、能力や勤務期間に応じて俸給が決定されます。少尉から中尉への昇進には約1年、中尉から大尉への昇進には約3年かかります。大学教育を受けていない士官は、最大で少佐まで昇進可能です。陸軍士官はブロンズメタル、空軍士官はシルバーメタル、海軍士官はゴールドメタルまたは金モールの階級章を着用します。大学未修了の士官の最高位は少佐ですが、イスラエル軍はこれらの士官に対し教育コースを設けています。

専門士官（クトチニム・アカデマイム）

専門士官は、工学、医療、司法などの専門コースを履修するために、士官育成過程が遅れている者に与えられる特別階級です。「カチン・ミクトソイ・アカデマイ（カマ）」は少尉相当、「カチン・アカデマイ・バキール（カアブ）」は中尉相当として扱われ、昇進も通常の階級と同様です。通常士官の階級章には月桂樹の模様がありますが、専門士官の階級章には巻物の模様があります。

下士官（ナガディム）

下士官は、志願兵のうち、兵役満了後も軍務を続けることに同意した専任の下士官を指します。多くの場合、部隊本部に配属されます。「ナガド」は聖書に登場する「指導者」を意味する「ナギド」に由来します。

兵（ホグリム）

兵は、徴集兵と野戦下士官を指します。イスラエルでは、ユダヤ人とドルーズ人の男女に18歳からの兵役義務があります（一部例外あり）。キリスト教徒、イスラム教徒、チェルケス人には兵役義務はありませんが、17歳から志願が可能です。男性は36か月、女性は24か月の兵役期間があります。兵の階級は、役職や任務よりも兵役期間によって決定され、徴兵から4〜12か月で伍長、8〜24か月で三等軍曹、24〜32か月で二等軍曹に昇進します。女性の場合、兵役期間が2年間のため、三等軍曹が最高階級となります。班を指揮する野戦下士官（三等軍曹、二等軍曹）は「マサク」と呼ばれます。

訓練兵（チロニム）

訓練兵は、徴兵後、軍務に就く前に数日から数週間の基礎訓練コースを受ける兵士を指します。この訓練は「チロニット」と呼ばれ、訓練兵は「チロン」（新兵）と呼ばれます。訓練兵は二等兵と同等の階級と待遇を受けますが、一般の階級と誤って混同されることもあります。訓練兵は、軍服の肩章に青いストライプの縁取りが入った線状の階級章を、ベレー帽にはダイヤモンド型の「訓練中」を表すバッジを着用します（訓練修了後に兵科バッジと交換）。


士官、兵ともに兵役満了後、予備役として編入され、男性は41〜51歳まで、女性は24歳まで予備役を務めます。

廃止された階級

過去には、以下の階級も存在していました。

メマレイ・マコン・カチン（見習士官）: 1960年代に創設され、少尉より下の階級でした。士官候補生が何らかの理由で士官課程を修了できなかった場合や、専門士官試験に不合格となった場合に与えられました。1994年に廃止。
ラヴ・トゥーラル・リション（一等伍長）: 1972年から1982年の間使用された階級で、下士官層の拡大を目的としていました。
トゥーラル・リション（上等兵）: 現役兵では1990年、予備役兵では1999年に廃止されました。一等兵は、一定期間の兵役後、伍長に昇進しました。

関連項目

イスラエル国防軍のインシグニア
軍隊における階級呼称一覧

外部リンク

イスラエル国防軍の階級（英語）
* イスラエル国防軍の階級（ヘブライ語）

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