イスラム法廷会議

イスラム法廷会議（Islamic Courts Union, ICU）とは

イスラム法廷会議（Islamic Courts Union, ICU）は、1994年にソマリアで結成されたイスラム法学者によるイスラム裁判所の連合体であり、付属する行政機関や警察組織を持つ自治政府です。ソマリア内戦後の混乱期に、イスラム国家の樹立を目指し勢力を拡大しましたが、その支配は長くは続きませんでした。

成立の背景と拡大

ソマリアは1991年の内戦勃発以来、中央政府が崩壊し、各地を軍閥が支配する無政府状態に陥っていました。イスラム法廷連合は、このような状況を打開し、イスラム法に基づいて社会秩序を回復することを目的として結成されました。

当初は小規模な組織でしたが、清廉な行政と治安維持能力によって住民の支持を集め、徐々に勢力を拡大。2006年には首都モガディシオを制圧し、一時はソマリアの大部分を支配下に置きました。

支配地域での活動

モガディシオ制圧後、イスラム法廷会議は荒廃した都市の復興に尽力し、清掃活動やインフラ整備を行いました。しかし、急進的な指導者たちは厳格なシャリーア（イスラム法）を住民に強制し、音楽や映画の鑑賞、女性のサッカー観戦などを禁止するなど、過激な政策を実行しました。これらの政策は、人権侵害として国際社会から批判を浴びました。

国際的な介入と瓦解

イスラム法廷会議の勢力拡大は、ソマリアの統一を妨げるものとして、アメリカやアフリカ連合（AU）から警戒されました。また、エリトリアが法廷会議を、エチオピアが暫定政府を支援するなど、国際的な代理戦争の様相を呈しました。

2006年12月、エチオピア軍が暫定政府を支援するためにソマリアに介入。イスラム法廷会議は劣勢となり、モガディシオから撤退。2007年1月には、暫定政府がソマリア全土の掌握を宣言し、イスラム法廷会議は瓦解しました。

ポスト法廷会議のソマリア

イスラム法廷会議の崩壊後、その構成員の多くは地下に潜伏し、暫定政府に対するゲリラ戦を展開しました。また、一部のメンバーは、より過激なイスラム過激派組織アル・シャバブに合流しました。

2008年には、イスラム法廷会議の穏健派がソマリア再解放同盟を結成し、暫定政府との和平交渉を開始しましたが、強硬派はこれに反発し、組織は分裂。その後もソマリアでは、イスラム過激派によるテロや攻撃が頻発し、混乱が続いています。

イスラム法廷会議の興亡は、ソマリア内戦の複雑さと、イスラム勢力の台頭、そして国際社会の介入が絡み合った、現代ソマリアの縮図と言えるでしょう。

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