イソマルトース

イソマルトースは、2つのグルコース分子がα-1,6グリコシド結合で結合した二糖類です。これは、デンプンなどの多糖類に見られる分岐構造と同一の結合様式です。そのため、デンプンの加水分解過程で生成されることもあります。

イソマルトースの製造は、通常、高濃度のブドウ糖液にグルコアミラーゼという酵素を作用させることで行われます。グルコアミラーゼは、アスペルギルス属やリゾプス属などの糸状菌から得られる酵素で、デンプンを分解してグルコースを生成する能力を持ちます。この反応において、グルコースの一部はα-1,6グリコシド結合で結合し、イソマルトースを生成します。生成されたイソマルトースは、精製・結晶化され、白色の結晶性粉末として市場に出回ります。

イソマルトースは、ショ糖に似た甘味を持ちながら、う蝕原性が低いという特徴があります。これは、イソマルトースが口腔内の細菌によって酸に分解されにくい性質を持つためです。そのため、虫歯予防の観点から、甘味料として注目されています。

さらに、イソマルトースは、消化酵素によって消化・吸収されにくいため、小腸で吸収されずに大腸まで到達します。大腸に到達したイソマルトースは、ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌によって選択的に利用されます。これらの腸内細菌は、イソマルトースを栄養源として増殖し、腸内環境の改善に貢献します。ビフィズス菌や乳酸菌は、腸内フローラのバランスを保ち、免疫機能の向上や有害物質の排除などに重要な役割を果たす有用菌として知られています。

イソマルトースのこれらの特性から、食品添加物としての用途が拡大しています。具体的には、菓子、飲料、ヨーグルトなどの食品に甘味料として添加される他、整腸作用を期待して、機能性食品素材としても利用されています。

近年では、イソマルトースの生理機能に関する研究も盛んに行われています。例えば、血糖値上昇抑制効果や、脂質代謝改善効果などが報告されており、健康増進に寄与する可能性が示唆されています。しかし、これらの効果は、摂取量や個体差によって異なる可能性があるため、更なる研究が必要とされています。

このように、イソマルトースは、その甘味、低う蝕性、そして腸内環境改善作用という特性を併せ持つ、優れた甘味料です。食品業界において、今後ますますその利用が拡大していくことが期待されます。

もう一度検索