イタリアンスパゲッティ

イタリアンスパゲッティ：地域で異なる多様な姿

イタリアンスパゲッティは、日本独自のスパゲッティ料理でありながら、その定義や調理法は地域によって大きく異なります。特定の調理法や明確な定義が存在せず、場所によって全く異なる料理を指すことが特徴です。この多様性が、イタリアンスパゲッティの魅力とも言えるでしょう。

関東地方におけるイタリアンスパゲッティ

関東地方や東北地方では、イタリアンスパゲッティはナポリタンと似た見た目を持ちながら、ケチャップを一切使用しない点が特徴です。麺と具材はナポリタンとほぼ同じですが、味付けは塩と胡椒が基本。場合によっては醤油などの調味料が加えられることもあります。このため、見た目はペペロンチーノに近く、ナポリタンの赤色とは対照的な白っぽい仕上がりになります。

かつては喫茶店の定番メニューとして、ナポリタンと並び称される存在でしたが、近年は提供する店舗が激減。懐古ブームでナポリタンが再評価される一方で、イタリアンスパゲッティは忘れ去られつつあります。その名前の由来については、ケチャップがない状況で、ありあわせの調味料で作られたことがきっかけで、イタリアの特定の地域を指すわけではないため「イタリアン」と呼ばれるようになったという説があります。また、単なる炒めスパゲッティが転じて「イタリアンスパゲッティ」になったという説も存在します。

興味深いことに、この料理はオーギュスト・エスコフィエの料理書に記載された「スパゲティーイタリエンヌ」という、塩と胡椒で炒め、パルメザンチーズで味付けする料理がルーツであるという説も有力です。これは現在のイタリアで一般的な「パスタ・ビアンカ」に通じるものがあります。パスタ・ビアンカは、茹でたパスタをオリーブオイルで炒め、塩と胡椒で味付けしたシンプルな料理で、和食で例えるなら素うどんのような存在です。ここにニンニクを加えて炒めると「アーリオ・オーリオ」、さらに唐辛子を加えると「ペペロンチーノ」になります。

関西地方におけるイタリアンスパゲッティ

関西地方では、一部の喫茶店でナポリタンを「イタリアン」と呼ぶことがあります。かつては近畿地方、特に大阪では広くこの呼称が使われていました。この呼称の由来は、ナポリタンのケチャップの色がイタリア国旗の色を連想させるからという説が一般的です。

中京地方におけるイタリアンスパゲッティ

中京圏、特に名古屋では、一部の喫茶店が独自の「イタリアン」を提供しています。これはナポリタンを熱した鉄板に盛り、溶き卵をかけて提供するスタイルが特徴です。このため、「鉄板スパゲティ」や「鉄板イタリアン」などと呼ばれることもあります。このスタイルの発祥は、名古屋市東区の「喫茶ユキ」で、1961年に店主がイタリア旅行で食べたスパゲッティが冷めてしまうのを不満に思い、考案したと言われています。語源は、鉄板を「板」に見立てて「板スパ」と呼び、それが「イタリアンスパゲッティ」になったという説があります。

まとめ

このように、イタリアンスパゲッティは、地域によって全く異なる姿を見せる、非常に多様な料理です。関東ではシンプルな塩胡椒味の炒めスパゲッティ、関西ではナポリタン、中京圏では鉄板に乗ったナポリタン風と、それぞれの地域で独自の進化を遂げてきました。この多様性こそが、イタリアンスパゲッティの大きな魅力であり、それぞれの地域で愛される理由なのでしょう。

関連項目

名古屋めし
イタリアン (新潟)|イタリアン_(新潟)

外部リンク

日本ナポリタン学会
日本ナポリタン学会 (@naporitan_org) - X（旧Twitter）
* 「白ナポ万歳 !! 」、関東・東北地方で言う｢イタリアン｣について専門的に呟く Twitter アカウント (@Shiro_Napo) - X（旧Twitter）

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