イナウ

イナウとは

イナウ（アイヌ語: イナウ / inaw）または木幣（もくへい）は、アイヌの祭具の一つであり、神々や先祖の霊とのつながりを保つための重要な供物です。この神聖な祭器は、人間とカムイ（神）を結びつける役割を果たしています。

特徴

イナウは自然の木から作られており、特に直径が数センチほどの樹木が素材として使われます。イナウの特徴的な部分は「キケ」と呼ばれる房状の構造で、これは大別して二種類あり、それぞれの形状や削り方により細かく分類されます。興味深い点は、イナウには性別があり、キケの形状や削り方でその性別が表現されることです。例えば、男のイナウではキケを撚ることが多く、女のものは散らす形が一般的です。また、削る方向や形に応じても性別が現れるため、供物として捧げる際にはカムイや先祖の霊の性別に合わせることが奨励されています。

用途

イナウにはカムイへの供物という重要な役割があります。アイヌの人々は、カムイへの祈りや願い事をする際にイナウを捧げ、そのことで人間の意図がカムイに伝わり、カムイの力や徳が増すと信じられていました。また、新たなカムイを創造する際には、イナウが衣や武器の材料として使用されることもありました。興味深いのは、イナウはカムイ・モシリ（神の世界）には存在しないものであり、そのため人間が捧げるイナウはカムイにとって特別な意味を持つと考えられています。このように、多様なイナウが存在することは、さまざまなカムイがいることを示しています。

作り方

イナウの制作には、特定の種類の木が使用されます。一般的にはヤナギ（スス / susu）が主材料ですが、ミズキ（ウトゥカニ / utukani）やキハダ（シケレペニ / sikerepeni）から作られたものは特に質が高いとされます。理由は、木肌が白いミズキは天において銀に、黄色いキハダは金に変わるという信仰があります。イナウ作りはアイヌ男性にとって重要な仕事で、祭りの前には多くの人々が集まりイナウの制作に取り組むことがありました。

具体的な作成プロセスとしては、まず枝を集め、その表皮を剥ぎ取ります。次に十分に乾燥させ、木の端から薄く削り出し、最後に房が下がっているような形を完成させます。また、削りかすや余った木材は無駄にせず、火にくべて燃やし、カムイに送る儀式も重要視されています。

種類

イナウには様々な種類があり、それぞれの用途や形状によって呼び方が異なります。例えば、枝がついているイナウを「ハシナウ（hasinaw）」、神の衣や武器に使用するものを「イナウキケ（inawkike）」と称します。また、特定の祭礼で使用するために20個程度を束ねた「シロマイナウ（siromainaw）」や、簡素に作成される「チェホロカケプイナウ」なども存在します。

このように、イナウはアイヌ文化において非常に重要な役割を果たし、神聖な儀式や日常生活にも深く根付いていることがわかります。

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