はじめに
『イノセンス・オブ・ムスリム』(英:Innocence of Muslims)は、
2012年に公開された反イスラム教の
映画であり、低予算で制作されました。当初、この
映画は『砂漠の戦士』というタイトルで撮影され、最終的に『イノセンス・オブ・ビン・ラーディン』として一度上映されましたが、日本では『無邪気なイスラム教徒』として知られています。本作の台本と制作を手がけたのは、自ら詐欺の前歴を持つエジプト系アメリカ人のサム・バシル(本名:ナクーラ・バスリー・ナクーラ)で、家族の支援を受けて
映画を制作しました。
制作の背景
ナクーラ・バスリー・ナクーラは、以前に詐欺や他人の身分証明書の不正利用で逮捕された経験があり、刑務所内でこの
映画の台本を執筆しました。プロデューサーのサム・バシルという名は、後に虚偽の人物であることが判明し、シリアスな疑念が持たれました。バシルは、
映画の目的がイスラム教の「偽善」を暴露するものであると主張し、大々的な資金調達を行ったものの、実際にはその主張に疑念が持たれています。
『イノセンス・オブ・ムスリム』は、エジプトにおけるキリスト教徒に対する迫害のシーンから始まります。その後、物語はムハンマドの時代に遡り、イスラム教の成立過程を歪めた形で描写します。
映画ではムハンマドの妻が偽の聖典を作成し、イスラム教の成立が描かれる場面などがあり、ムハンマドの追随者たちは冷酷で野蛮な存在として表現されています。予告編では非常に挑発的な表現が続き、暴力的な内容が含まれていることが強調されています。
初上映と予告編
映画は
2012年6月23日に一度だけハリウッドで上映され、観客の反応は散々なものでした。その後、
7月には予告編が
YouTubeに投稿され、問題作として注目を浴びました。
アラビア語に翻訳された予告編は、アラブ地域での関心を高め、多くの抗議デモが引き起こされる原因となります。
映画の公開後、エジプトでの抗議デモが激化し、一部は暴力にエスカレートしました。
カイロの米国大使館が襲撃され、リビアでも大使の死亡を含む悲劇が起きました。この事件は、
映画が引き金となり、国際的な緊張を生む結果になりました。多くの指導者や国際機関は、この
映画が引き起こした暴動に対して強く非難しました。
まとめ
『イノセンス・オブ・ムスリム』は、個人の表現の自由と、その背後にある思想が引き起こす衝突について考えさせられる作品です。この
映画は、現代における宗教的感情の微妙なバランスを揺るがしかねない存在として、記憶に残る事件となりました。
映画がもたらした社会的、政治的な影響は今も続いており、私たちがいかに表現の自由を維持するかという課題にも繋がります。