イノセント・ゲリラの祝祭

『イノセント・ゲリラの祝祭』

海堂尊による長編小説『イノセント・ゲリラの祝祭』は、2008年に宝島社から出版されました。本書は、著者の『田口・白鳥シリーズ』の第四弾であり、医療現場を背景にしたミステリー要素を含む物語です。物語の舞台は、桜宮市を離れて厚生労働省に設定されており、官僚たちの権力争いや思惑が intricately絡み合う様子が描かれています。

概要

本作は、白鳥が所属する厚生労働省を中心に展開され、特に「医療事故調査委員会創設検討会」の会議を巡る攻防が焦点となっています。著者は本作を書くにあたって、会議の内容があまりにも地味だったため、そのスリルや面白さを「微妙なバランス」を保ちながら描くことに苦心したと語っています。その結果、会議の中で官僚や教授たちがどのようにして自分たちの立場を守ろうとするか、またそれがどのように医療現場に影響を及ぼすかがテーマとなっています。

さらに、本作は時系列が『このミステリーがすごい！ 2008年版』に収録された短編『東京都二十三区内外殺人事件』と重なっているため、作品間でシンクロする展開も見どころの一つです。2010年に文庫版が発売された際には、これらの要素が新たな形で展開されています。著者は、執筆時にlocofrankの「Shared time」をBGMにしていたとされています。

ストーリー

物語の冒頭では、宗教団体「神々の楽園」の信者リンチ死事件が報じられ、警察の初動捜査ミスが問題視されています。この時、高階から厚労省の会議に参加するよう田口に依頼が入ります。田口は白鳥の指名を受け、渋々会議に出席する運びとなります。この会議は「病院リスクマネジメント委員会標準化検討委員会」に関するもので、最終的には医療事故調査のための独立した組織を設立することをテーマにしたものに発展します。

白鳥が主催者として会議を進めてきた中、田口はその会議参加者として名を連ねながら、官僚たちや教授たちの思惑に巻き込まれ、自らもその会議の攻防に関わっていくことになります。官僚たちは、その会議を有耶無耶にしようとしたり、権益を守ろうとしたりと様々な駆け引きが展開され、医療事故調査委員会創設の意義が問われ続けます。

登場人物

• - 田口公平: 東城大学医学部の講師で不定愁訴外来責任者。
• - 白鳥圭輔: 厚生労働省の技官で、官僚界の実力者。
• - 高階権太: 医院の病院長で、田口に潤沢な依頼をする。
• - 加納達也: 警察庁の捜査官で、「神々の楽園」の事件を解決した。

本作は、医療界の真実が厳しく問われる中で、多くの人間模様や権力闘争が織り交ぜられ、一方的な視点だけでなく、多角的に物事を考えさせる内容となっています。結局、会議や検討会に関わる人間の思惑がどのように医療事故調査に影響を与えるのか、実に考えさせられる一冊です。また、この作品は現在のところ映像化されていないため、その内容の深さを余計に際立たせています。

もう一度検索