イベリア航空602便墜落事故

イベリア航空602便墜落事故

1972年1月7日、スペインで発生した航空機事故です。バレンシア空港からイビサ空港へ向かっていたイベリア航空602便（機種：シュド SE-210 カラベル VI-R）が、着陸進入中に滑走路手前の山に墜落し、乗員乗客104名全員が死亡しました。この事故は、当時カラベル機で発生した事故としては最悪の被害であり、スペインで発生した航空事故としても2番目に犠牲者の多い事故となりました。

事故機について

事故を起こしたシュド SE-210 カラベル VI-Rは、1963年に製造され、同年6月25日に初飛行を行いました。イベリア航空には7月9日に納入され、当初は「Tomas Luiz de Victoria」という愛称がつけられていましたが、後に「Maestro Victoria」に変更されました。

事故の経緯

602便は、バレンシア空港からイビサ空港へ向かう国内定期旅客便でした。機長は37歳の男性で、総飛行時間は約7,000時間でした。乗員6名、乗客98名が搭乗しており、乗客の多くは年末年始をバレンシアで過ごし、イビサへ帰る労働者でした。また、アメリカ人とドイツ人の乗客が1名ずつ含まれていました。

602便は、サン・ジュゼブ・ダ・サ・タラヤ付近の海岸を通過中、高度14,000フィート（約4,300m）を通過したと報告しましたが、実際には高度12,000フィート（約3,700m）でした。現地時間12時15分頃、機長はイビサ空港の管制官に5,500フィート（約1,700m）までの降下許可を求めました。管制官によると、この時機長は「ビールを用意してくれ、私たちはここにいる」と発言したとされています。

滑走路07への進入中、機体は2,000フィート（約610m）以下まで降下していました。機長と副操縦士は管制官とサッカーの試合について話し込んでおり、機体が危険なほど降下していることに気づきませんでした。602便は、標高1,515フィート（約462m）のアタラヤサ山に激突し、機体は2つに分断されました。機体前方部は山の反対側の斜面に滑り落ちました。機影がレーダーから消えた際、管制官は墜落地点を海上だと誤認し、捜索活動は海上を中心に行われました。しかし、地元住民が霧の中で山へ降下していく602便を目撃しており、後に捜索隊が現場へ到着しましたが、生存者は確認されませんでした。

事故原因

事故原因は、パイロットが有視界飛行での着陸進入中に最低降下高度を遵守しなかったことと断定されました。パイロットの不注意が、この痛ましい事故を引き起こしたのです。

事故後

事故後、アタラヤサ山付近のSes Roques Altesに追悼碑が建てられました。この事故は、航空安全における人的要因の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

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