イベント (プログラミング)

プログラミングにおけるイベント

プログラミングにおけるイベントとは、プログラム内で発生する様々な動作や出来事を指します。これらは、単なる動作や出来事だけでなく、プログラム上でそれらを表現し、詳細な情報を保持するオブジェクト（イベントオブジェクト）としても扱われます。例えば、Webブラウザにおける「クリック」操作や、ネットワークリクエストにおける「データの取得完了」といった出来事がイベントとして認識されます。

イベントドリブン

イベントドリブン（イベント駆動型）とは、プログラムがイベントに応じた処理を行う方式のことです。キーボードのキーが押されたり、マウスのボタンがクリックされるといったアクションが発生すると、イベント信号が付帯情報（キーの種類やボタンの種類などのデータ）とともに発信されます。このイベントをトリガーとして、特定のプログラムコードが実行されるようにプログラミングすることをイベント駆動型プログラミングと呼びます。

一般的に、GUIアプリケーションのプログラミングでは、イベントループ（メッセージループ）と呼ばれる仕組みが用いられます。イベントループは、オペレーティングシステムから送られてくるイベント（メッセージ）を監視し、受け取ったイベントに対応するコールバック関数（イベントハンドラー）を実行します。この処理が終わると、再びイベントループに戻り、次のイベントを待ち受けるというポーリング的な手法が採用されています。

プログラマは、イベントハンドラーの中身を自由に記述することができますが、イベントの種類ごとに定められたインターフェースに従う必要があります。コールバック処理の登録には、関数ポインタやデリゲートといった仕組みが用いられることが一般的です。Javaでは、イベントリスナーインターフェースを実装したカスタムクラスでメソッドをオーバーライドすることで、イベント処理をカスタマイズできます。また、C#のようにイベントを言語仕様として組み込んでいるプログラミング言語では、イベントハンドラーの記述や登録をより簡潔に行うことができます。

DOM Events

DOMイベントは、Webブラウザで発生するイベントです。正確には、Document Object Model（DOM）で定義されたEventインターフェースを実装するオブジェクトを指します。例えば、Webページ上で発生するclickイベントやkeydownイベントなどがDOMイベントとして扱われます。プログラマは、カスタムイベント（CustomEventインターフェースを実装したオブジェクト）を発行することも可能です。これらのイベントを利用することで、マウスクリックのような操作や、ネットワークリクエスト完了のような出来事を表現し、イベントに応じた振る舞いを定義できます。

DOMイベントの大きな特徴は、イベントの伝播がDOMによって管理される点です。イベントはDOMツリーのノードに対して発行され、ツリーのルートに向かって伝播していきます。各ノードでは、イベントに対する処理を行うことができ、この伝播の仕組みはWebブラウザによって自動的に処理されます。このように、Webブラウザはイベント処理のためのミドルウェアとしての役割も果たしています。

排他制御におけるイベント

Windows（Win32以降）には、「イベント」と呼ばれるカーネルオブジェクトがあります。これは、イベントドリブンの文脈で語られるイベントとは異なり、排他制御やスレッド間の同期などに使用されます。Win32イベントオブジェクトは、シグナル（発信）されることで、待機状態にあるスレッドを再開させるために利用されます。また、プロセス間でイベントオブジェクトを共有することで、スレッド間通信だけでなくプロセス間通信も実現できます。

Win32イベントはイベント的事象を伝えることに特化しており、イベント待ちから解放されたスレッドを自動的に非シグナル状態にするといった機能があります。セマフォと似ていますが、イベントは資源数が常に1であり、伝達できる情報がシグナルの発生のみであるという点で異なります。

Win32イベントは、以下のAPIやクラスを通して提供されています。

• - Windows API - CreateEvent()関数 (HANDLE型オブジェクト)
• - ATL/MFC - CEventクラス
• - .NET Framework - System.Threading.AutoResetEventクラス, System.Threading.ManualResetEventクラス

まとめ

プログラミングにおけるイベントは、プログラムの動作や出来事を表現する重要な概念です。イベントドリブンなプログラミングでは、イベントに応じた処理を記述することで、柔軟で応答性の高いアプリケーションを開発できます。また、WebブラウザにおけるDOMイベントや、OSにおける排他制御のためのイベントなど、用途に応じた様々な種類のイベントが存在します。これらのイベントを適切に活用することで、より高度で効率的なプログラミングが可能になります。

関連項目

• - イベント駆動型プログラミング
• - イベントループ
• - 擬似プリエンプティブ
• - 割り込み
• - 例外処理

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