イムラーン家 (クルアーン)

『イムラーン家』

『イムラーン家』は、クルアーンに収められている第3の章であり、この章は200の節（アーヤ）から構成されています。特に注目されるのは、章の冒頭に配置されている神秘文字、Muqatta'atです。このような神秘文字が用いられているのは、合計29のスーラの中でも特異であり、その内容に深い意味が込められていると考えられています。

章の名称とその意義

『イムラーン家』のアラビア語表記は、آل عمران（アーリ・イムラーン）で、イムラーン族に関連する内容が特徴的です。イムラーンは、イエス・キリストの母マリア（マルヤム）の父親とされる人物であり、本章では彼の家系についての概説がなされています。また、異なる見解では、イムラーンはムーサーの父としても解釈されており、宗教的な文脈において重要な存在となっています。

背景と歴史的文脈

この章が成立した背景には、メディーナに住むユダヤ教徒たちの間で発生していた不穏な動きと、ウフドの戦いにおけるイスラーム軍の敗北があります。バドルの戦いではマッカの軍勢に勝利したものの、ウフドの戦いでは軍紀の乱れが原因で手痛い敗北を被り、多くの若者が命を落としました。このような厳しい状況下で生まれた章として、『イムラーン家』はムハンマドや彼の信徒たちに向けた力強いメッセージを含んでいます。

章の内容

『イムラーン家』は、イムラーン家族の物語を通じて、信仰の重要性を教えています。特に、神のために戦い命を落とした者たちは、アッラーの恵みのもとで安らぎを得、アッラーに帰依する者には楽園が約束されているとされています。さらに、啓典の民、すなわちユダヤ教徒やキリスト教徒の中でも、敬虔で謙虚にアッラーに仕える者には報いが与えられる一方で、信仰を拒否する者たちには厳しい懲罰が待ち受けていることが警告されています。

本章は、信仰と不信仰、戦いと安息、そして神に対する従順さとそれに対する報いの重要性を描写しており、歴史的な背景を持ちながらも現代においても多くの教訓を提供しています。

参考文献

• - 中田香織訳、中田考監訳『タフスィール・アル＝ジャラーライン （ジャラーラインのクルアーン注釈） 第1巻』日本サウディアラビア協会 2002年10月
• - 井筒俊彦訳『コーラン（上）』岩波書店 2004年
• - 小杉泰『クルアーン語りかけるイスラーム』岩波書店 2009年

このように『イムラーン家』の内容は、歴史的背景や文化を深く理解するための貴重な資料となり、信者にとって大変重要な章であるといえます。

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