イルストリールテ・ツァイトゥング

『イルストリールテ・ツァイトゥング』（独：Illustrirte Zeitung）は、ドイツで初めて発行されたイラスト付き週刊ニュース雑誌です。1843年に創刊され、1944年まで約100年間にわたり刊行されました。

創刊とその背景

本誌は、1842年に始まったイギリスの『イラストレイテド・ロンドン・ニュース』のライセンス供与を受けて発刊されました。同紙やフランスの『イリュストラシオン』を範とし、ヨハン・ヤコブ・ウェーバーが発行人となり、ライプツィヒを拠点に1843年7月1日から刊行がスタートしました。共同設立者であるCarl Berendt Lorckは、1845年まで技術面や連絡調整を担当しました。ウェーバー社の中核を成す刊行物として、後のドイツにおけるイラスト付き雑誌の基礎を築いたと評価されています。当時としては費用のかかる大胆な試みでしたが、良好な販売実績を上げていきました。

技術と写真の活用

『イルストリールテ・ツァイトゥング』の刊行において、時代ごとの出版事情に適応した木版技術の開発は非常に重要な要素でした。ウェーバーは様々な木版工房を利用し、1849年から57年にはロベルト・クレッチマー工房、1857年から60年にはベルリンのエルンスト・ハルトマン工房、1860年から70年にはミュンヘンのAnton Muttenthaler工房、そして1870年から1901年にかけてはFritz Waibler工房と提携しました。1858年にクレッチマーが死去した後、ウェーバーはその工房を買い取り、1860年には自身の印刷所を設立しましたが、19世紀末までは出版社のF. A. Brockhausが印刷を請け負うこともありました。

本誌の大きな特徴の一つは、独自の写真特派員を起用し、写真と写真レポートを大量に掲載したことです。これにより、記事の内容がより豊かになり、約100年間にわたるドイツおよび世界の歴史、文化、政治、そして人々の日常生活を記録した貴重な資料となっています。政治、科学、文化、文学といった幅広い分野の重要な出来事が詳細に報じられ、30万点を超えるイラストや写真が掲載されました。また、テキストとイラストを組み合わせる表現方法は、それまで言葉だけで伝えられていた情報に新たな視覚的な要素を加え、内容の理解を深める上で画期的な試みでした。

発行部数と歴史的な掲載内容

発行部数は順調に増加し、創刊から半年後には7,500部だったものが、3年後には11,000部に達し、最盛期には100,000部を超える人気を博しました。技術的な革新も積極的に取り入れられ、1883年にはゲオルグ・マイセンバッハが考案した自動写真オートタイプによる聖杯の画像が、ドイツの報道機関で初めて写真版画として掲載されました。一方で、ナチズムの台頭とそのプロパガンダにおいて、本誌の視覚資料が影響を与えた側面も指摘されています。

チェス分野への貢献

『イルストリールテ・ツァイトゥング』は、現代ドイツにおけるチェスの発展にも重要な役割を果たしました。Karl Julius Simon Portiusが担当したチェス・コラムは、当時のドイツ国内でチェスに関する活動の中心的な存在として広く認識されていました。多くの重要なチェス・プロブレムがここで初めて紹介され、活発な議論が展開されました。例えば、1854年のノヴォトニーのテーマなどが挙げられます。後の1903年に出版された「Das Indische Problem」の中でも、Johannes KohtzとCarl KockelkornはPortiusの業績の重要性を高く評価しています。

終刊

通算5000号を超える刊行を経て、文化、文学、歴史、社会、政治、科学技術の発見など、広範な分野の情報がアーカイヴされました。しかし、第二次世界大戦の戦禍が深まる中、1944年9月、5041号をもって定期刊行を休止しました。同年12月には「Der europäische Mensch」（ヨーロッパ人）というタイトルの特集号が発刊され、これが『イルストリールテ・ツァイトゥング』の最終号となりました。

本誌は、ドイツの初期イラスト雑誌として、また約一世紀にわたる社会の変遷を視覚的に記録した貴重なメディアとして、その歴史的意義は大きいと言えるでしょう。

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