イレアナ・コトルバシュ

イレアナ・コトルバシュの音楽キャリア

イレアナ・コトルバシュ（Ileana Cotrubaş）は、1939年6月9日にルーマニアのガラツィで誕生した著名なソプラノ歌手です。音楽一家で育った彼女は、父ヴァシレがアマチュア合唱団のテノール歌手であった影響を受け、音楽の道を歩むことになります。彼女の音楽キャリアは9歳で放送少年少女合唱団に参加したことから始まり、11歳で首席ソリストの地位を得るなど、その才能を早くから発揮しました。

1952年にブカレストに移ったコトルバシュは、地元の音楽院でさらに技術を磨きます。1964年にはドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』でイニョルド役を務めてブカレスト歌劇場でデビューを果たし、その後は『仮面舞踏会』のオスカルや『リゴレット』のジルダなど、多彩な役をこなしていきます。ヨーロッパ各地でのオペラ上演にも出演し、瞬く間にその名声を高めました。

特に、1965年にオランダで開催されたセルトヘンボス声楽コンクールでの優勝が、彼女のキャリアを次のステージへ進める大きなきっかけとなりました。続いて1966年にはミュンヘン国際音楽コンクールでも声楽部門で優勝。この成功によって、ウィーン国立歌劇場やベルリン国立歌劇場など、著名な劇場への出演オファーが舞い込みました。

1969年には、イギリスのグラインドボーン音楽祭でメリザンド役を演じてイギリスデビューを果たしました。続けてコヴェント・ガーデンの王立歌劇場でも活躍し、特に1971年にはチャイコフスキーの『エヴゲニ・オネーギン』での役柄により、さらなる評価を受けます。1970年にはウィーン国立歌劇場との3年契約を結び、レパートリーも『フィガロの結婚』のスザンナや『椿姫』のヴィオレッタなど多岐にわたりました。

1973年にはシカゴ・リリック・オペラでアメリカ初登場を果たし、翌年にはバイエルン国立歌劇場とともに日本にも初めて訪れました。また、1975年にはミラノ・スカラ座で急遽の代役として『ラ・ボエーム』のミミを歌い上げ、大成功を収めました。この公演は彼女のキャリアの中で大きな注目を集める瞬間となり、彼女の歌唱は広く称賛されました。

1977年にはメトロポリタン歌劇場でミミを演じ、共演者には著名なホセ・カレラスやレナータ・スコットがいます。その後もメトロポリタン歌劇場での活動を行い、1980年にはプラシド・ドミンゴとともに『椿姫』に出演し、再びその実力を示しました。コトルバシュは、演出家や共演者に対して高い要求を持つことで知られ、時にはその信念から公演をキャンセルすることもありました。

1990年に現役を引退したコトルバシュは、その後マスタークラスを開催するなど、若手歌手の育成にも力を入れています。自身の経験や知識を次世代に伝えることで、彼女の影響力はオペラ界を越えて広がっています。音楽の世界で交わした真摯な情熱と表現力は、生涯にわたって多くの人々に感動を与え続けているのです。

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