イレルダの戦い

イレルダの戦い：カエサルと元老院派のヒスパニアを巡る攻防

紀元前49年、共和政ローマ末期の内乱期、ガイウス・ユリウス・カエサル率いる軍団と、グナエウス・ポンペイウスを支持する元老院派の軍勢が、ヒスパニアの地で激突しました。この戦いは「イレルダの戦い」として知られ、カエサルの卓越した軍事戦略と、時に自然の猛威が戦局を左右する中で繰り広げられました。

カエサル、ヒスパニアへ進軍

ポンペイウスがイタリアから脱出した後、カエサルは元老院派が支配するヒスパニアの制圧を目指し、先遣隊を派遣。自らも軍を率いて進軍を開始しました。マッシリア（現在のマルセイユ）の攻略を別働隊に任せ、カエサルは将兵を鼓舞し、「将軍なき軍隊」と対峙することを宣言しました。

イレルダの戦い：戦略と自然の脅威

ピレネー山脈を越え、ヒスパニアに侵入したカエサル軍は、ルキウス・アフラニウスとマルクス・ペトレイウス率いる元老院派の軍勢と、イレルダ（現在のリェイダ）近郊で対峙します。両軍はシコリス川（現在のセグレ川）を挟んで陣を構え、カエサルは敵に気づかれることなく濠を築き、補給路を断つべく丘の占領を試みますが、元老院派も応戦し、激しい攻防戦が繰り広げられました。

戦況は一転、豪雨によりシコリス川が氾濫し、橋が流されるという事態が発生。カエサル軍は川に挟まれた地域に孤立し、食糧不足に陥ります。しかし、カエサル軍は秘密裏に架橋を成功させ、孤立状態から脱出。オスケンセス族やイッルルガウォネンセス族といったヒスパニアの部族がカエサル軍に味方し始め、元老院派の軍勢は撤退を開始しました。

カエサル軍は追撃を開始し、元老院派の退路を遮断。包囲戦の末、元老院派は降伏し、アフラニウスとペトレイウスはギリシアへ逃亡しました。

ヒスパニア制圧

イレルダでの勝利後、カエサル軍はヒスパニア・キテリオルへ進軍。ウァロはガデス（現在のカディス）で抵抗を試みますが、各地がカエサル支持を表明し、降伏。ヒスパニア全土はカエサルの支配下に入りました。カエサルはマッシリアの戦後処理を行い、ギリシアへと向かいました。

イレルダの戦いは、カエサルの内乱における重要な転換点となり、その後の権力掌握への足がかりとなりました。戦略、外交、そして自然の力が複雑に絡み合ったこの戦いは、ローマ史における重要な一幕として語り継がれています。

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