イン ザ・ミソスープ

イン ザ・ミソスープ

村上龍によって1997年に発表された小説。読売新聞夕刊に連載後、書籍化され、後に幻冬舎文庫からも文庫版が出版された。1998年には第49回読売文学賞を受賞している。

ストーリー

物語は、夜の歓楽街で風俗のアテンド（斡旋・紹介）の仕事をしている若い男、ケンジの日常から始まる。そこに、フランクと名乗るアメリカ人観光客が現れ、アテンドを依頼してくる。フランクは一見して奇妙な印象を与える白人男性だった。ケンジはフランクと行動を共にするうちに、次第に深い不信感を抱き始める。その不信感は、徐々に現実のものとなっていく。

解説

作者の村上龍は、あとがきで「作品の連載中に神戸連続児童殺傷事件が起こり、連載の後半で14歳の少年が容疑者として逮捕された」と述べている。この事件との類似性もあいまって、当時、本作は大きな話題を呼んだ。

また、本作には、日本という国に対する痛烈な批判も込められている。「独立のために多くの人が死んだりという、歴史的苦痛を味わっていない」が故の危機感の欠如や、「この国には真剣に生きている人が少ない」といったメッセージが、物語に深みを与えている。

『イン ザ・ミソスープ』は、無動機殺人を正面から取り上げながらも、奇妙なまでの癒しを感じさせる傑作として評価されている。幻冬舎文庫版では、心理学者の河合隼雄が解説を担当した。

映画化案

2008年5月、イギリスの映画雑誌「Screen」のカンヌ版において、ヴィム・ヴェンダース監督が次回作として『イン ザ・ミソスープ』を手がけることが発表された。フランク役には、米俳優のウィレム・デフォーが予定されていると報じられたが、2023年現在、映画化は実現していない模様である。

もう一度検索