イングリッシュ・レーシング・オートモビルズ

イングリッシュ・レーシング・オートモビルズ (ERA) の歴史

イングリッシュ・レーシング・オートモビルズ（ERA）は、1933年から1954年まで活動したイギリスのレーシングカーメーカーです。その歴史は、戦前の輝かしい活躍から戦後の再興、そして現代に残る遺産まで、多くのドラマと技術革新に彩られています。

戦前のERA：イギリスの誇りをかけた挑戦

1933年11月、ハンフリー・クック、レイモンド・メイズ、ピーター・ベルトンの3人によってERAは設立されました。彼らの目標は、ヨーロッパのレース界でイギリスの威信を高めること。資金はクックの家業からの援助で賄われ、ベルトンが設計、メイズがドライバーとして活躍しました。

コストの制約から、ERAは1500ccのスーパーチャージャー搭載ヴォワチュレットクラスに参戦。シャシーはリード・レイルトン設計、トムソン・アンド・テイラー製。エンジンは改良されたライレー製6気筒で、マレー・ジェイミソン設計の過給機を搭載。1500ccで180～200bhp、2000ccで250～275bhpという高い出力を誇りました。ボディワークは、マルコム・キャンベルの「ブルーバード」にも携わった職人による手作業で仕上げられました。

1934年5月、最初のシャシー「R1A」が公開。初期のハンドリング問題を克服し、数々の勝利を収めます。1935年のニュルブルクリンクでは、1位、3位、4位、5位と圧倒的な成績を収めました。1930年代後半には、ディック・シーマンを迎え、ヴォワチュレットレースを席巻。シャムの王子2人もERAのドライバーとして名を馳せました。第二次世界大戦直前には、より近代的な「Eタイプ」も開発されましたが、戦争によってその開発は中断されます。

戦後のERA：再起と新たな挑戦

終戦後、ヨーロッパのモーターレースが再開されると、レスリー・ジョンソンがERAを再興。ダンスタブルで事業を再開し、戦前に開発されたEタイプを改良してレースに参加しました。新型過給器の搭載や改良されたエンジンなど、様々な技術的挑戦が行われました。しかし、機械的トラブルに悩まされ、レースでの結果は必ずしも安定しませんでした。スターリング・モスがドライブした1.5リッターのGタイプも、エンジンの信頼性不足に苦しみました。

ERAの遺産

戦後のERAは、研究開発企業「Engineering Research and Application Ltd」へと転身。モータースポーツへの関与は減少しましたが、その技術と名声は受け継がれていきました。1980年代には、ミニのターボバージョン「ERAミニ・ターボ」が誕生。戦前のERA車両の多くは現存しており、歴史的イベントでその雄姿を見ることができます。ボーンには、レイモンド・メイズの功績を称える展示が常設されています。

まとめ

ERAの歴史は、技術革新、勇敢な挑戦、そして惜しまれる早すぎる終焉という、モータースポーツ史における重要な一章を刻んでいます。その遺産は、今もなお、多くのモータースポーツファンに語り継がれています。ERAの技術と精神は、現代のレーシングカー開発にも少なからず影響を与えていると言えるでしょう。

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