イングーシ共和国

イングーシ共和国

イングーシ共和国（ロシア語：Республика Ингушетия、イングーシ語：ГӀалгӀай Мохк）は、ロシア連邦北カフカース連邦管区に位置する共和国です。東側にはチェチェン共和国、西側には北オセチア共和国があるこの地域は、南にジョージア共和国を接しています。住民の大部分はイスラム教スンナ派を信仰するイングーシ人であり、ロシア人の人口は非常に少ないことが特徴です。

国名と歴史

イングーシ共和国の正式名称は「Республика Ингушетия」（ラテン文字転写：Respublika Ingushetiya）で、日本語ではイングシェチア共和国と訳されます。1996年に現在の名称に改称され、日本では一般的にイングーシ共和国と呼ばれています。漢字では「印古什」と表記されます。

イングーシ人とチェチェン人は民族的には同じ起源を持ち、歴史的には非常に密接な関係があります。1859年には、帝政ロシアが北カフカスを併合する際、抵抗した地域の住民がチェチェン人、その一方で抵抗せずに受け入れた地域の住民がイングーシ人と呼ばれるようになりました。1930年代にはソビエト連邦の成立に伴い、イングーシ自治州が設置されましたが、1944年にはスターリンによる強制移住が行われ、多くのイングーシ人が中央アジアやシベリアに追われ、悲惨な状況に見舞われました。この期間中に約30%のイングーシ人が命を落としました。

その後、1957年にフルシチョフ政権下でイングーシ人の名誉が回復され、チェチェノ・イングーシ自治共和国が復活しましたが、領土は以前よりも小さくなりました。ソビエト連邦崩壊後の1991年には、イングーシ共和国が新たに創設され、ロシア連邦の一部として位置付けられました。しかし、北オセチアとの間での領土問題や、チェチェンとの関係には緊張が続いています。

治安状態

近年、イングーシ共和国では治安状態が著しく悪化しています。2009年には、政府を狙ったテロ事件が頻発し、特に連続して行われた攻撃が注目されました。例えば、自動車爆弾を用いた暗殺未遂事件や、建設省ビルの襲撃事件が発生し、これにより多くの人命が失われました。この年だけで80人以上がテロの犠牲となったとされ、政府は治安部隊を増強しました。

治安悪化の背景には、経済的困難や高い失業率が影響していると考えられています。失業率は60%を超え、一部住民は治安部隊への報復のために過激派組織に参加するケースも見られます。また、ロシア政府による人権侵害の指摘もあり、テロ容疑者とみなされた住民が拉致され、殺害される事件も報告されています。

行政と標準時

イングーシ共和国は、ロシア連邦の一部として政治的な枠組みの中で機能しています。この地域はモスクワ時間（UTC+3）を使用しており、夏時間は採用されていません。

結論

イングーシ共和国は、複雑な歴史と独特な文化を持つ地域であり、現在も多くの課題に直面しています。治安の不安定さや人権状況の悪化など、地域の安定が求められています。

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