インタラクティブ・ライブ

インタラクティブ・ライブについて

「インタラクティブ・ライブ」とは、日本のミュージシャンである平沢進が1994年に始めた、観客参加型のマルチメディアコンサートです。このユニークなライブイベントは、観客がストーリーの進行に対して積極的に関与することが特徴です。

開催の背景

平沢進は、1980年代末からのデジタル技術の進展を受けて、音楽制作から流通に至るまでのプロセスを見直し、新たなライブの形を模索していました。彼は「インターネットによって情報発信と流通が完全に網羅された」と考え、デジタルアートの新しい表現方法を実験することに決めました。平沢は、音楽がどのようにインターネットを通じて伝わるか、その可能性を探求したのです。

パフォーマンス形式の特異性

インタラクティブ・ライブの最大の特徴は、観客が物語の展開に選択を加えることができる点です。観客は巨大スクリーンに投影される情報にリアクションし、声を通じてストーリーの分岐を選択していきます。このため、予め設定された曲目を単に演奏するのではなく、観客の反応に応じて演奏される楽曲が変化します。このライブ形式では、「グッドエンド」や「バッドエンド」といった複数の結末が用意されており、観客はストーリーを良い方向へ導くための選択を判断します。

1998年以降、このライブは双方向性の要素がさらに強化され、リアルタイムでインターネットを通じた参加が可能になりました。これにより、会場に足を運ばないリスナーも「在宅オーディエンス」として、ライブの進行に影響を与えることができる仕組みが導入されました。このように、インターネットを利用した観客参加型のライブイベントは新しい可能性を切り拓いてきたのです。

準備とリスク

インタラクティブ・ライブでは、ストーリーの準備には年間を通じての大規模な作業が必要となります。観客のリアルタイムの反応に基づいて演奏内容が変化するため、ライブを行うには二つ分の準備が必要です。1990年代の初頭にはAMIGAコンピュータが使用されましたが、そのスペックの制約から、時にはトラブルが発生することもありました。例えば、1998年のライブではエラーが発生し、40分ほど中断する事態となりました。それでも平沢は、「オーディエンスの反応がストーリーの展開に影響を与えてこそ、インタラクティブであり、そこに意味が存在する」と語り、リスクを背負うことに対しても大きな熱意を示していました。

収録とメディア配信

インタラクティブ・ライブは、各公演を収録した映像作品が販売されており、ファンに向けてはDVDとしても提供されています。また、2021年には、1996年に行われたライブ音源が音楽配信サービスで公開されました。このように、過去の公演を振り返ることで新たなファン層の開拓にもつながっています。

平沢進による新しいライブの形は、過去の常識を覆すものであり、今後もその革新性が音楽業界に与える影響は計り知れません。インタラクティブ・ライブは、単なる音楽イベントを超え、観客とアーティストの新たな関係を築く場となり続けるでしょう。

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