インチクィン男爵

インチクィン男爵：アイルランド貴族の爵位

インチクィン男爵は、アイルランド貴族の男爵位であり、1543年にマロー・オブライエンに授与されたことに始まります。その後、1654年にインチクィン伯爵、1800年にはトモンド侯爵という上位爵位も創設されましたが、これらの爵位は1855年に廃絶。インチクィン男爵のみが初代男爵に遡る分流によって継承され、現在に至っています。

歴史

創設と特別継承規定

最後のトモンド王マロー・オブライエンは、イングランドの支配に対抗しましたが、最終的にヘンリー8世に降伏。1543年7月1日の勅許状により、トモンド伯爵とインチクィン男爵に叙せられました。この際、インチクィン男爵位は通常の男系男子への継承とされましたが、トモンド伯爵位には、マローの甥であるドノー・オブライエンへの特別継承権が規定されました。

この規定により、マローの長男ダーモッド・オブライエンは、2代インチクィン男爵位のみを継承することになりました。

インチクィン伯爵の創設とジャマイカ総督

6代男爵マロー・オブライエンは、ピューリタン革命期にマンスターの王党派を指揮。その功績により、1654年10月21日にインチクィン伯爵とバレンのオブライエン男爵に叙せられました。2代伯ウィリアム・オブライエンは、1690年から1692年にかけてジャマイカ総督を務めました。

トモンド侯爵の創設と廃絶

5代伯マロー・オブライエンは、アイルランド議会およびグレートブリテン議会の庶民院議員を務め、1800年12月29日にトモンド侯爵に叙せられました。この爵位には、男子なき場合に兄弟への特別継承権が認められていました。さらに、1801年10月2日には連合王国貴族爵位であるタプロウのトモンド男爵に叙せられ、連合王国議会貴族院議員となりましたが、彼には男子がいなかったため、この爵位は一代で廃絶しました。

トモンド侯爵位の継承とタッドカスター男爵

初代トモンド侯の死後、甥にあたるウィリアム・オブライエンが特別継承規定により2代トモンド侯を継承。彼はアイルランド貴族代表議員としてイギリス貴族院議員を務めた後、1826年7月3日に連合王国貴族爵位であるタッドカスター男爵に叙せられました。しかし、彼にも男子がいなかったため、タッドカスター男爵位も一代で絶えました。

爵位の廃絶とインチクィン男爵位の継承

2代トモンド侯の死後、その弟であるジェイムズ・オブライエンが3代トモンド侯を継承。彼は海軍大将まで昇進した海軍軍人でしたが、子供はいませんでした。彼の死去により、インチクィン男爵位を除く全ての爵位（トモンド侯、インチクィン伯、オブライエン男爵）が廃絶しました。

インチクィン男爵位は、初代男爵に遡っての分流である5代準男爵ルーシャス・オブライエンに継承されました。

近代以降

13代男爵、14代男爵エドワード・オブライエン、15代男爵ルーシャス・オブライエンは、アイルランド貴族代表議員として貴族院に議席を持ちました。

2023年現在の当主は、19代男爵コナー・オブライエンです。邸宅はアイルランド・クレア県にあるトモンド・ハウスです。

現当主の保有爵位・準男爵位

第19代インチクィン男爵
第11代(レメナの)準男爵

参考文献

* ベケット, J.C 著、藤森一明 訳『アイルランド史』八潮出版社、1972年

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