インディアン寄宿学校

インディアン寄宿学校とは

インディアン寄宿学校は、19世紀後半から20世紀にかけて、主にアメリカ合衆国とカナダで設立された施設です。その目的は、先住民の子どもたちを親やコミュニティから引き離し、西洋文化への同化を強要することでした。これらの学校は、先住民の文化、言語、宗教を否定し、キリスト教や英語教育を中心とした教育を施すことで、彼らを「文明化」させようとしました。しかし、実際には、子どもたちは過酷な環境下での生活を強いられ、深刻なトラウマを抱えることになりました。

アメリカにおけるインディアン寄宿学校

アメリカでは、1879年にリチャード・ヘンリー・プラット中尉によってカーライル・インディアン工業学校が設立されたのが始まりです。プラットは「内なるインディアンを殺し、その人間を救う」というスローガンを掲げ、同化政策を正当化しました。彼は、先住民の子どもたちを「生産的なアメリカ市民」に育成することを目標としましたが、それは同時に、彼らの文化やアイデンティティを奪うことでもありました。寄宿学校では、先住民の言語や習慣が禁止され、英語教育と職業訓練が重視されました。しかし、職業訓練の内容は、実際には保留地での生活には役立たないものが多く、また、学校での生活は規律と監視に満ちており、子どもたちは精神的な虐待や性的虐待を受けることもありました。

2000年、インディアン管理局（BIA）は、寄宿学校制度を「民族浄化」と公式に認め、謝罪しました。しかし、その影響は現在にも及び、先住民コミュニティには深刻なトラウマが残されています。

ワシントン・ポスト紙の調査では、寄宿学校で少なくとも3104人の生徒が死亡したと報告されており、これは政府の公式発表の3倍に相当します。

カナダにおけるインディアン寄宿学校

カナダでは、アメリカよりも早く1840年代からインディアン寄宿学校が設立されました。その目的はアメリカと同様で、先住民の文化を破壊し、同化を強要することでした。カナダ最後の寄宿学校が閉鎖されたのは1996年になってからです。カナダでも、寄宿学校での虐待や死亡事件が数多く報告されており、その影響は深刻です。

2008年には「カナダ真実和解委員会」が発足し、寄宿学校制度が文化的ジェノサイドに相当すると結論付けました。その後も調査が続けられ、多くの遺骨が発見されています。

カーライル・インディアン工業学校

カーライル・インディアン工業学校は、アメリカにおける最初の寄宿学校であり、その後の寄宿学校のモデルとなりました。創設者のプラットは、軍人としての経験から、先住民を「文明化」させるためには、子どもたちを親から引き離し、徹底的に西洋化する必要があると考えました。学校では、厳しい規律の下、英語教育、職業訓練、キリスト教教育が行われました。また、先住民の文化や言語を話すことは厳しく禁止され、違反者には体罰が加えられました。

インディアン寄宿学校での生活

寄宿学校での生活は、子どもたちにとって過酷なものでした。親元から引き離され、見知らぬ土地に送られた子どもたちは、まず髪を短く切られ、西洋風の衣服に着替えさせられました。彼らは、部族の名前を捨て、白人の名前を与えられ、英語以外の言語の使用は禁止されました。学校では、読み書き算数の他に、男子は大工仕事や農業、女子は家政や裁縫などの職業訓練が行われましたが、これらは彼らの生活にはあまり役に立ちませんでした。また、学校内での娯楽は、白人の遊びに限られていました。聖書の暗記やキリスト教の祈祷が強制され、部族の信仰は弾圧されました。子どもたちは、常に監視下に置かれ、プライバシーは一切ありませんでした。

ホームシックにかかることは「恥ずべきこと」とされ、脱走を試みた子どもたちには、過酷な懲罰が科せられました。また、精神的虐待や性的虐待も頻繁に発生していました。

寄宿学校がもたらした悲劇

寄宿学校の劣悪な衛生環境は、多くの生徒が病気で死亡する原因となりました。特にアパッチ族の子どもたちは、カーライル・インディアン工業学校で多くの命を失いました。寄宿学校は、先住民の子どもたちに深いトラウマを与え、文化の喪失、精神的な傷、貧困、アルコール依存症など、今日まで続く多くの問題を引き起こしました。さらに、寄宿学校は政治的な道具としても利用され、先住民の土地や資源を奪うための手段として用いられることもありました。

その後の歴史

1934年には、同化政策は公式目標から外れましたが、その後も同化政策が続けられました。しかし、1960年代以降、先住民の権利運動が活発になり、同化政策に対する抵抗が強まりました。1969年には、上院報告書で同化政策がインディアンの子どもたちの教育に悲惨な影響を与えたと指摘されました。2000年には、BIAが歴史的な謝罪を行いましたが、寄宿学校の影響は今なお残っています。

カナダの寄宿学校墓地の調査

カナダでは、2021年に寄宿学校の跡地で多数の遺骨が発見され、その悲劇が再び注目を集めました。ローマ教皇フランシスコもカナダを訪問し、先住民に対して謝罪を行いました。この事件は、寄宿学校の負の遺産を改めて浮き彫りにし、その影響が現在も続いていることを示しています。

まとめ

インディアン寄宿学校は、先住民の文化を破壊し、子どもたちに深い傷跡を残した悲劇の歴史です。その影響は、現在も先住民コミュニティの様々な問題として存在し、過去の過ちを反省し、和解と癒しを進める必要があります。

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