インヴァーゴードン反乱

インヴァーゴードン反乱

インヴァーゴードン反乱（Invergordon Mutiny）は、1931年9月に発生した大英帝国の大西洋艦隊の水兵によるストライキです。この出来事は、政府が海軍の支出を削減するために導入した新しい政策に端を発しています。政府は財政難を背景に、軍事費の見直しを進めていましたが、その結果として、特に下級水兵の給与が深刻な影響を受けることとなったのです。

元々、上級兵士や士官、及び1925年以降に入隊した下級兵士に対しての削減率は10パーセントでした。しかし、1924年までに入隊した下級兵士は、その給与が1925年以降の同僚と同じ水準へと引き下げられることが決まり、この場合、実質的な削減は25パーセントに達することになりました。このような状況は、もともと最低限の給与で生活をしていた最下層の水兵たちにとって到底受け入れられるものではありませんでした。

9月12日、海軍省が削減案を正式に認可したことを受け、反乱の機運はますます高まっていきました。そして9月15日、3隻の戦艦（ネルソン、ロドニー、ヴァリアント）と1隻の巡洋戦艦（フッド）の水兵たちは、予定されていた演習参加命令を拒否しました。この時点での状況は非常に厳しく、艦隊司令部は海軍省に対して水兵たちの不満を伝え、その解決を強く要請しました。特に認識されたのは、25パーセントという削減率に関する早急な見直しの必要性でした。

その後、9月16日に各艦艇は海軍省からの命令によって拠点港へと戻され、政府は階級にかかわらず一律10パーセントの削減に同意することとなりました。しかしこの反乱は、当時のロンドン証券取引所での混乱を引き起こし、ポンドの急落を招く結果となりました。この影響を受けて、イギリス政府は9月21日に金本位制を放棄する事態にまで至ります。

最終的に、このインヴァーゴードン反乱は終息を迎え、約400名の水兵が除隊処分となりました。また、反乱の主導者の一人であるレン・ウィンコットは投獄され、その後イギリス共産党に参加してソビエト連邦に亡命しました。同様に、もう一人の首謀者であるフレッド・コープマンは、スペイン内戦の国際旅団に加わり、英国を去りました。

この反乱は、当時のイギリス海軍の状況や労働者運動の一端を示す重要な出来事として、今なお歴史の中で語り継がれています。

もう一度検索