イーゴリ2世

イーゴリ2世（？ - 1147年）は、キエフ大公スヴャトスラフの孫にあたり、チェルニゴフ公オレグの子として生まれました。兄にはキエフ大公フセヴォロドがいます。彼は、プチヴリ公、ベレスチエ＝ドロギチン公を経て、短期間キエフ大公位に就きましたが、政争に巻き込まれ、悲劇的な最期を遂げました。ロシア正教会では聖人として列聖されています。

キエフ大公位を巡る争い

1146年、兄フセヴォロドの死後、その遺言によりイーゴリはキエフ大公位を継承しました。しかし、キエフの人々は、密かにペレヤスラヴリ公イジャスラフに大公位に就くよう要請し、事態は紛糾します。イーゴリとイジャスラフの間で合戦が始まると、キエフの人々の軍勢はイジャスラフ側に寝返り、イーゴリは捕らえられ、幽閉されるという憂き目に遭いました。

修道士としての生活と最期

幽閉中に病を発したイーゴリは、解放後、修道院に入れられ修道士となります。病から回復した後も修道院で過ごしますが、1147年、キエフ大公位にあるイジャスラフを殺害しようとするオレグ一門の陰謀が明るみに出ると、キエフの民会は報復としてイーゴリを処刑することを決定します。人々は教会に押し入り、奉神礼中のイーゴリを捕らえ、殺害しました。その遺体は市場に晒されたと言われています。

聖人としての崇敬

イーゴリは、当初キエフ郊外の修道院に埋葬されましたが、1150年、弟のスヴャトスラフによってチェルニゴフの救世主顕栄大聖堂に改葬されました。彼の遺体は不朽体として安置され、聖遺体を安置した日（6月5日）と殺害された日（9月19日）が、イーゴリの記憶日となっています。

イーゴリの生涯は、当時のキエフ大公国における権力争いの激しさと、人々の信仰心の深さを物語っています。政争の犠牲者でありながら、聖人として崇敬を集めるイーゴリの存在は、ロシアの歴史と宗教において重要な意味を持っています。

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