ウィリアム・ウィザリング

ウィリアム・ウィザリング：ジギタリスの薬効発見で名を馳せた18世紀の科学者

ウィリアム・ウィザリング (1741年3月17日 - 1799年10月6日) は、18世紀イギリスを代表する多才な科学者でした。植物学者、地質学者、化学者、そして医師としての顔を持ち、特にジギタリスという植物の薬効に関する研究で知られています。彼の功績は、現代医学にも大きな影響を与えています。

早期の人生と教育

シュロップシャー州ウェリントンに生まれたウィザリングは、1762年から1766年にかけてエディンバラ医学校で医学を学びました。卒業後、スタッフォード王立診療所でコンサルタントとして勤務した後、著名な医師エラズムス・ダーウィンの推薦により、1775年にはバーミンガム・ジェネラル・ホスピタルの医師に就任します。

しかし、ウィザリングの人生は順風満帆ではありませんでした。1783年には肺結核と診断され、療養のためポルトガルに二度渡航するも、帰国途中に海賊襲撃に遭うという危険な経験もしています。

ジギタリスの薬効解明

ウィザリングの最も重要な業績は、ジギタリスの薬効発見です。水腫治療に用いられていた民間療法で使用されていたジギタリスに着目し、9年以上にわたる綿密な研究を行いました。様々な部位の薬効を検証し、156例（または163人）もの患者を治療することで、適切な使用方法と投与量を明らかにしました。

1785年、その研究成果を『An account of the foxglove and some of its medical uses; with practical remarks on the dropsy, and some other diseases』として発表。この業績は、実験薬理学という分野のパイオニアとしての彼の地位を確立しました。ダーウィンもジギタリスの研究論文を発表しましたが、ウィザリングのより詳細な研究に基づいた成果が広く認められました。

多岐にわたる科学的貢献

ウィザリングの研究活動は医学にとどまりませんでした。植物学の分野では、イギリスに生育する植物の体系的な分類を行い、その成果を書籍にまとめました。リンネの分類法を採用したこの書籍は、ジョナサン・ストークスらとの共著で改訂版が何度か出版され、イギリス植物学に多大な貢献をしました。彼の名にちなんだ植物、Witheringia solanaceaというナス科の植物も存在します。

化学と地質学にも精通していたウィザリングは、カンバーランドで発見された鉱石Terra Ponderosaの分析を行い、それが未知の物質であることを示しました。後に炭酸バリウムであると判明したこの鉱物は、ドイツの地質学者ヴェルナーによって「Witherite（毒重石）」と命名されています。また、イギリス国内外の様々な温泉の成分分析にも取り組み、ポルトガルのカルダス・ダ・ライニャの薬泉の分析により、ポルトガル化学アカデミーの会員に選ばれるなど、その業績は国際的にも高く評価されました。

プリーストリー暴動と晩年

1791年、フランス革命直後のバーミンガムでは、ジョセフ・プリーストリーらを標的にした暴動（プリーストリー暴動）が発生。ウィザリングはルナー・ソサエティを通じてプリーストリーと親交があり、彼の家も襲われる危険にさらされましたが、軍隊によって救出されました。

ウィザリングは1799年、バーミンガムのスパークブルックで結核により死去しました。バーミンガム大学の医学部には現在もウィリアム・ウィザリング教授職が設置され、彼の業績を称える記念講演が毎年行われています。

著作・論文

ウィザリングは、医学、植物学、化学、地質学に関する数多くの論文や書籍を発表しました。その中には、ジギタリスに関する研究論文の他に、猩紅熱、鉱物分析、植物分類に関するものなど多様なテーマが含まれています。これらの著作は、当時の科学の発展に大きく貢献し、彼の多才ぶりを示す貴重な記録となっています。

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