ウィリアム・ゴーランド

ウィリアム・ゴーランド

ウィリアム・ゴーランド（1842年12月16日 - 1922年6月9日）は、明治政府がイギリスから招聘した化学および冶金技師であり、日本の古墳研究の先駆者とされる。彼は「日本考古学の父」として知られ、日本アルプスの名付け親としても名高い。

幼少期と日本への来日

ゴーランドは、1842年にイギリスのサンダーランドでジョージ・トンプソン・ゴーランドの長男として生まれた。彼は王立化学専門学校や王立鉱山学校で化学や冶金学を学び、優秀な成績を修める。卒業後、1870年から1872年までブロートン製銅会社で働き、そこで技術者としての基盤を築いた。

1872年、当時30歳のゴーランドは、明治政府から大阪造幣寮のお雇い外国人技師として招聘を受けて日本に渡ることとなる。

日本における活動と業績

ゴーランドは1872年10月8日に大阪造幣寮への着任を果たし、以降16年間にわたりその職務を全うした。彼は通常の契約期間が3年であった当時、おそらく日本での長期滞在を選んだ数少ない技術者の一人であった。

彼は化学兼冶金技師として、反射炉の築造や銅の溶解作業を行い、その技術を日本で初めて導入し、教えた。さらに、日本陸軍省冶金関係特別顧問に任命され、イギリス式冶金技術の普及に尽力した。また、彼の指導を受けた技術者が三菱でイギリス式の反射炉を造ることに成功するなど、その影響は広範囲に及んだ。

1881年には兵庫県の平野鉱泉からの炭酸水を確認し、その品質を評価し、後に「平野水」として商品化された。このように、彼は日本の近代産業の発展に寄与し、明治新政府から複数回にわたって表彰を受けた。

公務の合間には古墳の調査や日本各地の登山、さらには日本絵画の収集などにも没頭していた。

古墳研究の先駆者としてのゴーランド

ゴーランドは古墳研究において多大な貢献をし、その成果は今日でも高く評価されている。彼は近畿地方から南は日向、東は磐城まで、全国各地の古墳を調査した。その実地調査においては、古墳の横穴式石室406基を調査し、140回の略図を作成した。

彼の調査手法は当時の科学技術を超えており、現代の考古学的アプローチにも通じるものであった。1897年に発表した『日本のドルメンと埋葬墳』や、その後の研究結果は日本の古墳文化における重要な文献となった。

日本アルプスの命名

1881年、ゴーランドは信州地方の山脈を「日本アルプス」と名付けた。この名称は、後に広まっていく中で世界的にも認知されることとなった。彼の山岳信仰や登山への情熱は、彼がこの名称を付けることにつながった。この功績は後に多くの登山家や観光客を惹きつける要因ともなった。

帰国後の業績

1888年に日本を離れた後は、イギリスのブロートン製銅会社に復職し、古墳に関する論文や研究を相次いで発表した。また、王立人類学協会でも活躍し、1915年には遺物の整理や古代遺跡の研究に力を注いだ。

彼の晩年は、科学活動に励みつつ、日本との深い絆を保つことに努めた。そして1922年6月に79歳で死去し、ロンドンの聖メリルボーン墓地に埋葬された。彼のいくつもの業績は、今なお多くの人々に影響を与えており、その功績は日本とイギリス両国の学問において高く評価され続けている。

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