ウィリアム・トマス・ベックフォード

ウィリアム・トマス・ベックフォードについて

ウィリアム・トマス・ベックフォード（William Thomas Beckford, 1760年10月1日 - 1844年5月2日）は、18世紀から19世紀初頭にかけて活躍したイギリスの著名な作家、美術評論家、紀行家、パトロン、政治家です。彼は後に多くの人々に影響を与える作品を創り出し、特にそのゴシック小説『ヴァセック』が知られています。ベックフォードはまた、音楽の才能にも恵まれ、声楽家やピアニストとしても活動するなど、多才な人物でした。

幼少期と教育

ベックフォードはウィルトシャー州のフォントヒルで生まれました。父はホイッグ党の著名な政治家で、2度ロンドン市長を務めた富豪でした。彼の母はステュアート家の末裔で、名付け親はチャタム伯ウィリアム・ピットでした。幼少期から、ラテン語やフランス語、イタリア語、ドイツ語を学び、5歳の時にはモーツァルトからピアノの指導を受けました。ベックフォードは彼の音楽的才能に誇りを持っていましたが、後世の研究者たちは彼の話の信憑性を疑問視しています。

大陸での教育と遺産

10歳の時、父は急逝。これにより、ベックフォードは大きな遺産を相続することになりました。これには、現金のほか、ジャマイカのサトウキビ農場が含まれていました。彼はこの金銭的自由を利用し、執筆や芸術に打ち込みました。成人すると、彼はイタリアを訪れ、その体験をもとに紀行文を書き上げました。

スキャンダルと結婚

ベックフォードの私生活は、多くのスキャンダルに彩られています。彼は両性愛者であり、極秘裏に従弟との関係を持っていました。このため、社会的な評判を守るために結婚に踏み切りますが、結婚後もその関係は続いていました。1784年に同性愛行為の容疑で起訴されましたが、無罪となります。彼はその後、スイスに移り住みます。

代表作『ヴァセック』と建築の情熱

スイス滞在中に執筆した『ヴァセック』は、彼の代表作となり、特に神を冒涜する内容から当時大きな物議を醸しました。文学的には重要な作品であり、後世多くの作家に影響を与えています。その一方で、ベックフォードは建築にも情熱を注ぎ、ゴシック様式の邸宅を建設しました。これには多くの資金を投じ、彼の独自の美的感覚が色濃く反映されています。

晩年と遺産

晩年のベックフォードは、フォントヒル・アビーの売却や、自身の財政の悪化に直面しながらも、文学活動を続けました。彼の死後、彼の影響は続き、ディズレイリなどの作家に多大な影響を与えました。ベックフォードの作品や建築は今なお多くの人々に評価されています。

主な業績

彼の主な作品としては、『夢、覚めた思考と出来事』や、『イタリアからの手紙、スペインとポルトガルの素描』などがあります。『ヴァセック』は特に多くの翻訳を経て、ゴシック文学の傑作として多くの読者に親しまれています。また、彼の後裔にはモナコのレーニエ3世がいます。

ベックフォードの人生は、彼の多彩な才能だけでなく、スキャンダルや印象的な建築により、彼を特異な存在として際立たせています。

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