ウィリアム・ハルバート

ウィリアム・ハルバート：ナショナルリーグの礎を築いた男

ウィリアム・アンブローズ・ハルバート（William Ambrose Hulbert、1832年10月23日 - 1882年4月10日）は、メジャーリーグの黎明期に球団オーナーとして活躍し、後にナショナルリーグの第2代会長を務めた人物です。ニューヨーク州バーリントンフラッツで生まれた彼は、その手腕によって19世紀の野球界に大きな足跡を残しました。

実業家から球団経営者へ

ハルバートは、シカゴで食料雑貨商の娘と結婚後、石炭貿易へとビジネスを拡大し、財を成しました。その資金を元に、1871年にナショナル・アソシエーションに加盟していたシカゴ・ホワイトストッキングス（現在のシカゴ・カブス）を支援するようになります。しかし、同年発生したシカゴ大火によって球団は活動を一時休止せざるを得なくなりました。

1874年、ハルバートはホワイトストッキングスの代表となり、球団は活動を再開します。当時のナショナル・アソシエーションは運営体制が脆弱であり、選手との契約においても問題が頻発していました。ハルバートは、このような状況を打破し、より強固なリーグを築く必要性を痛感していました。

ナショナルリーグ創設と改革

1875年にナショナル・アソシエーションが解散すると、ハルバートは1876年にモーガン・バークリーらと共にナショナルリーグを設立します。初代会長にはバークリーが就任しましたが、実質的な運営はハルバートが主導しました。彼は、リーグの安定と発展のため、断固たる措置を講じていきます。

ハルバートは、設立当初に定められたリーグ規則を厳格に運用しました。リーグ初年度の日程を消化しなかったニューヨーク・ミューチュアルズとフィラデルフィア・アスレチックス（現在のアスレチックスとは異なる）を、収益が見込める大都市の球団であったにもかかわらず、リーグから追放しました。また、1877年にはルイビル・グレイズの八百長事件を摘発し、関係者4名を永久追放処分としました。1880年には、リーグ規則に違反して球場で酒類を販売したシンシナティ・レッズ（現在のレッズとは異なる）をリーグから脱退させるなど、強硬な姿勢を貫きました。

これらの措置は、所属球団に対してリーグの規律を徹底させるという強烈なメッセージとなり、ナショナルリーグの運営基盤を確立する上で重要な役割を果たしました。さらに、ハルバートはリーグが審判を雇用する制度を導入し、試合の判定における不正行為を防止する対策も講じました。

早すぎる死と殿堂入り

ハルバートは、1882年にリーグ会長在任中に心臓発作で急逝しました。49歳という若さでした。彼の死後、100年以上経った1995年に、その功績が認められアメリカ野球殿堂入りを果たしました。ウィリアム・ハルバートは、ナショナルリーグの発展に尽力した功労者として、野球史にその名を刻んでいます。

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