ウィリアム・ブース

ウィリアム・ブースの生涯と救世軍の誕生

ウィリアム・ブース（William Booth）は1829年4月10日にイングランドのノッティンガムで生を受け、1912年8月20日にこの世を去った。彼はメソジストの説教者であり、救世軍の創設者として広く知られている。彼が設立した救世軍は、1865年にロンドンで誕生し、以来、世界中に広がっていった。この運動の特徴は、物質的な武器に頼らず、精神的な救済を目指す点である。

生い立ち

ブースの幼少期は決して楽なものではなかった。父が家屋建築士で、昇栄の時期もあったが、投資失敗により一家は貧困に苦しむこととなる。ブースが13歳の時に父が死去すると、母は彼と2人の姉妹を懸命に育て上げた。母は慈善心にあふれ、困っている人々に手を差し伸べることで、ブースに強い影響を与えた。ブースは後に「父よりも母から影響を受けた」と語っている。

14歳の時、彼は偶然にも教会の前を通りかかり、有名な説教者アイザック・マースデンの説教を聞くことになる。この体験は、彼の信仰の基盤を築くものであり、その後、米国からやってきた伝道者ジェームズ・カウエーの説教にも心を打たれ、信仰に目覚めることになる。彼の心が変えられた瞬間であった。

結婚と家族

キャサリン・マンフォードという女性もまた、彼の人生の重要な存在となった。キャサリンは1829年に生まれ、彼女自身もメソジストの活動に従事していた。二人は1855年に結婚し、その後、彼らの人生は信仰とともに歩むことになる。

救世軍の設立

1865年7月2日、ブースはロンドン東部の貧民街に足を踏み入れ、最初は魂の救済を目的とした活動を始めた。しかし、彼はこの地で出会った人々の姿を見て、彼らが本当に救いを必要としていると強く感じる。妻にその気持ちを打ち明けた後、ブースは貧困層のために長期的に尽力する決意を固めた。

彼は新しい教派を形成するつもりはなかったが、教会の上流階級からの冷たい反応に直面し、自ら行動を起こさなければならないと感じた。そして、1870年に「東ロンドン伝道会」を設立し、その後、キリスト教伝道会、さらには救世軍へと変貌を遂げていく。

1879年12月には週刊の『ときのこえ』を創刊し、活動はアメリカやフランスにまで広がりを見せた。1888年にはロンドンで万国大会を開催し、16か国から集まった士官によって救世軍は国際的な運動として発展していった。

晩年と遺産

ブースは教育を受ける機会に恵まれなかったが、その功績によりオックスフォード大学から名誉神学博士号が授与された。晩年には視力を失うも貧困者への思いやりを忘れず、中国伝道を進めるなどの活動を続けた。彼は「汝、もしただ信ぜば神の約束は確実なり」との言葉を残し、この世を去った。彼の埋葬地はロンドン近郊のアブネー・パーク墓地である。

著書

ブースの著作には『最暗黒の英国とその出路』や『ペンテコステ物語』などがある。これらの著作を通じて彼の思いや活動が後世に伝えられている。彼の人生は、信仰に生き、困っている人々に手を差し伸べ続けた姿を表している。

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