ウィリアム・ロビンソン (造園家)

ウィリアム・ロビンソン（William Robinson）

ウィリアム・ロビンソンは、1838年にアイルランドで生まれ、1935年に生涯を閉じた、イギリスを代表する造園家、作庭家、園芸家、そして著述家です。彼は、自然を尊重した庭園のあり方を提唱し、当時のガーデニング界に大きな変革をもたらしました。

生涯と活動

ロビンソンは、アイルランドの首都ダブリンで庭師としての修業を積みました。23歳の時にイギリス・ロンドンへ渡り、そこで自生する草花の美しさに魅了されます。この経験が、彼の後の庭園思想の根幹を形成することとなりました。

ロビンソンは、精力的に雑誌への寄稿や著作活動を行い、その思想を広めていきました。彼は後に、英国の園芸雑誌『ガーデン』の編集者となり、自身の考えをさらに発信していきます。代表的な著書には『野生の庭園』や『The English Flower Garden and Home Grounds』などがあり、これらの書籍を通じて、庭園は自然を尊重する場所であるべきだと強く訴えました。

庭園思想

ロビンソンは、当時の豪華な装飾庭園を強く批判し、より自然に近い庭園づくりを提唱しました。彼は、同時代に流行していた毛氈花壇や刈り込みといった庭園手法を否定し、自然な植物の配置や、植物本来の美しさを活かすことを重視しました。

彼の思想は、自然環境への配慮、植物それぞれの性質と相互関係、植物の色彩計画といった多岐にわたります。また、自生植物と外来種の交配を試みるなど、実験的な取り組みも行っていました。

当時の伝統的な考え方を持つ人々からは、ロビンソンの理論は当初受け入れられませんでしたが、彼の自然を尊重する庭園思想は、次第に多くの人々に受け入れられていくようになりました。

ロック・ガーデンの提唱

ロビンソンは、小庭園のデザインとして、石を効果的に配置したロック・ガーデンというスタイルを編み出しました。このデザインは、自然の景観を模倣し、植物の美しさを引き立てるものとして、各地に広まりました。

影響

ウィリアム・ロビンソンの思想は、現代のガーデニングにも大きな影響を与えています。彼の提唱した自然風の庭園は、今日の庭づくりにおいて重要な要素となっており、多くの人々に自然と調和した庭園の魅力を伝えています。

彼の功績は、単に庭園のデザインにとどまらず、環境への意識を高め、自然との共生を促すという、より広い視野での貢献であると言えるでしょう。

参考資料

『庭のイングランド』川崎寿彦著、名古屋大学出版会、1983年。
『英国ガーデン物語』赤川裕著、研究社出版、1997年。
『庭の文化史 英国式風景庭園文献集成』ユーリカ・プレス、2005年。
『図説英国庭園物語』小林章夫著、河出書房新社、1998年。
『英国ガーデニング物語』チャールズ・エリオット著、中野春夫訳、集英社、1999年。
『イギリス風景庭園 水と緑と空の造形』田路貴浩著、丸善、2000年。
『イギリス緑の庶民物語 もうひとつの自然環境保全史』平松紘著、明石書店、1999年。
『イギリス風景式庭園の美学』安西信一著、東京大学出版会、2000年。

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