ウィルキンソン・ソード

ウィルキンソン・ソード：剣から剃刀、園芸用品へ至る歴史

1772年、ロンドンで創業したウィルキンソン・ソード社は、当初は剣の製造を主軸としていました。長い歴史の中で、その事業は多角化を遂げ、剃刀や園芸用品といった分野にも進出。今日では、エナジャイザー・ホールディングス傘下の2つの企業によって、剃刀と園芸用品はそれぞれ別々に製造・販売されています。

多様な製品群と製造拠点

ウィルキンソン・ソード社は、剣製造で培った技術を基盤に、銃、銃剣、タイプライター、園芸用品、はさみ、さらにはオートバイといった幅広い製品を製造していました。イギリス国内のロンドン、ノーサンバーランド、ウェールズなどに製造拠点を持ち、長年に渡り自社製品の製造を続けてきました。しかし、2000年にはイギリス国内の剃刀工場が閉鎖され、ドイツへの集約が行われました。

オートバイ製造への挑戦

1903年、ウィルキンソン・ソード社はオートバイ製造にも挑戦しました。フランス製のエンジンを搭載した初期のオートバイを製造したものの、事業は成功しませんでした。その後、1911年には豪華なツーリングタイプのオートバイ「ウィルキンソンTMC」を開発し、第一次世界大戦勃発の1916年まで製造を続けました。このオートバイは軍事用途を想定した設計でしたが、軍への採用には至りませんでした。第一次世界大戦中は、多数の銃剣の製造に注力しました。戦後、新たな自動車用エンジンの開発に着手しましたが、オートバイ製造は再開しませんでした。

ウィルキンソン・マッチ社の成立とその後

1973年、ウィルキンソン・ソード社はブリティッシュ・マッチ社と合併し、「ウィルキンソン・マッチ社」を設立しました。これは、ジレット社との激しい市場競争の中で、より大きな宣伝予算を確保するための戦略でした。ウィルキンソン・ソード社は、テレビCMなどでその長い歴史と伝統を強調しました。しかし、ウィルキンソン・マッチ社はその後、幾度かの買収劇を経て、園芸用品部門は1990年代にフィスカース社に売却されました。

現代のウィルキンソン・ソード

現在、ウィルキンソン・ソードブランドの剃刀はエナジャイザー・ホールディングス社によって製造されています。4枚刃の剃刀は、ヨーロッパではウィルキンソン・ソードブランド、北米とアジア・オセアニアではシックブランドとして販売されています。これらの剃刀はドイツで製造されています。

園芸用品部門は、フィンランド・アメリカの企業であるフィスカース社が所有し、ウェールズに拠点を置いています。

2005年には、アクトンの剣工場が閉鎖され、剣の製造が終了しました。しかし、ウィルキンソン・ソード社の機械や設備の一部は、ドイツのWKC社に売却され、現在も世界各国の軍隊や警察で使用される儀仗用剣の製造に利用されています。また、ロバート・プーリー氏はウィルキンソン・ソード社から剣の設計図などを購入し、インドで製造した剣を英国で仕上げる事業を展開しています。

ウィルキンソン・ソード社は、剣の製造から始まり、剃刀、園芸用品へと事業を拡大し、幾多の合併、買収を経て、現在も世界中でそのブランドは親しまれています。その歴史は、単なる企業の歴史を超え、技術革新や市場競争の変遷を映し出す興味深いものです。

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