ウィンストン・ミリオン

ウィンストンミリオンとNASCARグランドスラムの栄光と終焉

NASCARウィンストンカップシリーズにおいて、長年にわたりドライバーたちを魅了し、伝説を刻んできた高額賞金レース「ウィンストンミリオン」と、その系譜を受け継ぐ「ウィンストンノー・ブル・ファイブ」。本稿では、これらのレースの歴史、勝者、そしてNASCARにおけるグランドスラムの変遷について詳細に解説します。

ウィンストンミリオン：100万ドルの夢

「クラウン・ジュエル」と呼ばれるNASCARの4大レース（デイトナ500、ウィンストン500、コカ・コーラ600、サウザン500）のうち3レースを同一年に制したドライバーに、100万ドルの賞金が贈られるウィンストンミリオン。この賞金レースは、レイノルズ・タバコ社のスポンサーシップの下、1985年から1997年にかけて実施されました。

1985年、ビル・エリオットが初優勝を果たし、「100万ドルの男」として一躍時の人となりました。しかし、その後は優勝者がなかなか現れず、1997年にジェフ・ゴードンが2人目の優勝者となるまで、12年もの歳月が流れました。この間、ダレル・ウォルトリップ、デイル・アーンハート、デイビー・アリソン、デイル・ジャレットといった名ドライバーたちが、惜しくもあと一歩のところで優勝を逃すなど、ウィンストンミリオン獲得は容易ではなかったことを物語っています。特にアリソンは1992年サウザン500で雨による中断の影響を受け、優勝のチャンスを逃しています。

ゴードンは最終ラップでジェフ・バートンとの激しいデッドヒートを制し、悲願の優勝を掴みました。このレースの勝利は、単なる賞金獲得以上の価値を持ち、NASCARの歴史に刻まれる偉業となりました。

ウィンストンノー・ブル・ファイブ：新たな挑戦

1998年、ウィンストンミリオンに代わり、新たな賞金レース「ウィンストンノー・ブル・ファイブ」が導入されました。これは、5つの指定レースで上位5位入賞したドライバーが、次のレースで優勝した場合に100万ドルを獲得できるというシステムでした。さらに、一般のファンにも100万ドル獲得のチャンスが与えられ、インターネット投票で勝者を予想した参加者の中から抽選で5名が選ばれました。

このシステムは、ウィンストンミリオンよりも優勝者の輩出率が高く、ジェフ・ゴードンが4回も優勝するなど、多くのドライバーが賞金獲得の可能性を掴みました。しかし、レース構成は年々変更され、最終的に2002年をもって終了しました。

グランドスラムとキャリアグランドスラム

「クラウン・ジュエル」4レースをすべて制覇することを「グランドスラム」と言います。ウィンストンミリオンやウィンストンノー・ブル・ファイブは、このグランドスラムを達成するための重要な要素でした。同一年にグランドスラムを達成したドライバーはいませんが、4レースのうち3レースを制覇したドライバーは複数存在しました。

また、現役期間中に4レースすべてを制覇したドライバーを「キャリアグランドスラム」達成者と言います。2023年現在、この偉業を達成したドライバーは7名にのぼります。一方、まだキャリアグランドスラム達成の可能性を残すドライバーも複数おり、今後の活躍に期待が集まります。

グランドスラムの終焉

2003年以降、レイノルズ・タバコ社のスポンサー撤退と訴訟の影響により、グランドスラムはNASCARから消滅しました。これは、長年にわたってNASCARを彩ってきた伝統の終焉を意味し、多くのファンに惜しまれつつ幕を閉じました。ウィンストンミリオン、ウィンストンノー・ブル・ファイブ、そしてグランドスラム。これらのレースは、NASCARの歴史に燦然と輝く金字塔として、いつまでも語り継がれることでしょう。

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