ウェイファインディングシステム

ウェイファインディングシステムとは

ウェイファインディングシステムとは、建築物や公共施設において、人々が特定の目的地に効率よくたどり着けるように設計された情報やサインのシステムを指します。これは単にサインを設置することだけを意味するのではなく、利用者が環境に適応し、目的地を見つけやすくするための総合的な手法です。

環境心理学におけるウェイファインディング

環境心理学の概念では、ウェイファインディングは特に不慣れな環境において、目的地を見つけ出すための探索行動を示します。このプロセスには、周囲の状況を認識し、手がかりを使って目的地までの道筋をたどるという、複雑な認知行動が含まれています。ウェイファインディングは特に図書館や病院など、多様な施設で実際に応用されています。

図書館におけるウェイファインディング

図書館の場合、利用者の目的は特定の資料を見つけることです。そのため、館内の構造やサインが極めて重要です。理想的には、全体のレイアウトを一望でき、自身の位置と資料の位置関係を明確に把握できるように設計されるべきです。特に地下に位置する図書館では、フロアの展開が直感的であればあるほど、利用者が資料を探しやすくなります。

ヨーロッパの伝統的な書架配置では、閲覧席を囲むように書架が設置される壁付書架が採用されており、この方式は「一筆書き」で資料を探すのには効果的です。しかし、この配置は書架が占める面積に対して収容できる冊数が少ないという欠点も抱えています。一方で日本では、開架フロアの中央部に書架を配置する中置型の配置が主流です。

病院におけるウェイファインディング

病院では、利用者の動線を動かす医療スタッフの機能性や効率性が最も重要視されます。そのため、病院内は平面的であり、同じ材料や色が使われることが一般的です。しかし、この均質なデザインは、利用者が自分の現在地を把握しにくくする可能性があります。病院内で道に迷うことは、患者にとっての不安感や身体的な疲れを引き起こし、診療時間に遅れる場合もあります。

著名なデザイナー、ジェイン・マルキンは著書『Hospital interior Architecture』において、病院におけるウェイファインディングの基本要素を以下の4つにまとめました。

1. 目的の場所（受付、待合室、病室などを示す記名サイン）
2. メイン通路（主要なアクセス経路）
3. 目印（現在の位置を把握するためやスタッフの案内のために利用される指標）
4. 強調（サインシステムや照明、床のパターンなど、情報を視覚的に強調する要素）

これらの要素を考慮することで、病院内のウェイファインディングシステムは効果的に機能し、利用者に優しい空間を提供することが可能になります。ウェイファインディングの重要性は、現代の建築や設計においてますます増しており、個々の環境に適した手法の開発が求められています。

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