ウェールズの山

『ウェールズの山』（原題：The Englishman Who Went up a Hill but Came down a Mountain）は、1995年に公開されたイギリス映画です。ウェールズの小さな村を舞台に、測量を巡る騒動と、人々の温かい絆を描いたハートウォーミングな作品として知られています。

物語は、1917年、ウェールズの静かな村に、イギリス軍から派遣された二人の測量技師、ジョージ・ガラードとレジナルド・アンソンが訪れることから始まります。彼らの任務は、村人たちが長年誇りとしてきたフュノン・ガルウという丘の標高を測量することでした。

村人たちは、フュノン・ガルウが「山」として認められることを切に願っていました。しかし、測量の結果、フュノン・ガルウの高さは305メートルという「山」の基準に満たない299メートルであることが判明します。この知らせは村人たちに大きな落胆をもたらしました。

それでも、村人たちは諦めませんでした。彼らはフュノン・ガルウの頂上に土を運び、標高を上げるという大胆な計画を実行することにします。村中の人々が参加し、スコップを手に汗を流して土を運びます。

一方、測量技師たちは、村人たちの熱意と行動に戸惑いを隠せない様子です。村人たちは、技師たちを引き留めようと、車を故障させたり、鉄道の運行を妨害したりと、様々な方法で彼らを村に留まらせようとします。さらには、村一番の美女ベティを駆使し、色仕掛けまで試みます。

当初は困惑していたアンソンでしたが、次第に村人たちの熱意に心を動かされていきます。そして、彼らと協力し、フュノン・ガルウを「山」にしようと決意します。同時に、ベティへの恋心を抱き始めるのです。

土運びは順調に進みそうでしたが、大雨による土砂崩れに見舞われ、作業は難航します。それでも村人たちは諦めず、アンソンも村人たちと共に作業を続けます。しかし、日が暮れてしまい、その日の測量は不可能となってしまいます。

アンソンはベティと共にフュノン・ガルウの頂上で夜を過ごし、翌朝、改めて測量を行うことにしました。そして、明けた朝、測量の結果は306メートル。村人たちの努力が実り、フュノン・ガルウはついに「山」として認められたのです。

アンソンは村人たちにその吉報を伝え、さらにベティとの婚約を発表します。この知らせは、村中に喜びと祝福の波を広げました。フュノン・ガルウは「山」になっただけでなく、村人たちの絆と愛を象徴する存在になったのです。

この映画は、単なる測量の話にとどまらず、人々の夢と努力、そして愛情を描いた、心温まる物語です。ユーモラスな展開と、美しいウェールズの風景も相まって、観る者の心を優しく包み込む作品となっています。映画の原題である「丘を上り、山から下りてきたイングランド人」という伝説的な物語も、この映画のテーマと深く関わっていると言えるでしょう。映画祭での受賞歴も高く評価されており、高い芸術性とエンターテインメント性を兼ね備えた傑作です。

もう一度検索