ウォルター・ブレナン

ウォルター・ブレナン (1894年7月25日 - 1974年9月21日) は、ハリウッド黄金期を代表するアメリカ人俳優です。マサチューセッツ州リンにアイルランド系移民の両親のもとに生まれ、エンジニアの道を志しました。しかし、学生時代から演劇への関心を持ち、ヴォードヴィルにも出演。銀行勤務を経て第一次世界大戦に従軍した経験も持ちます。

除隊後はパイナップル農園経営や不動産事業に携わりましたが、成功とは縁がなく、サイレント映画のエキストラとして芸能界へ足を踏み入れます。1927年、31歳で映画デビューを果たしました。1930年代は多くの映画に出演するものの、ほとんどがクレジットなしの端役や小さな役柄でした。地道な努力が実を結ばない日々が10年近く続いたのです。

転機は1932年に訪れます。西部劇の撮影中、馬に顔面を蹴られるという事故に遭い、多くの歯を失ってしまいました。しかし、この事故が彼のキャリアを大きく変えることになります。歯の欠けた独特の口調と風貌が、コミカルな印象を与え始め、観客を惹きつける個性へと変化していったのです。

ブレナンは、善人から悪役まで幅広い役柄を演じ分け、名バイプレイヤーとして活躍しました。数々の作品で存在感を示し、1936年の『大自然の凱歌』でアカデミー助演男優賞を初受賞。この受賞は彼のキャリアの大きな飛躍となり、その後も数多くの作品に出演し続けました。

その後も『ケンタッキー』(1938年)と『西部の男』(1940年)で2度目の、3度目のアカデミー助演男優賞を受賞。アカデミー助演男優賞を3度受賞した俳優は、現在も彼ただ一人です。これらは彼の演技力の高さと、幅広い役柄をこなす高い適応力を示しています。230本を超える映画に出演し、ハリウッド黄金期を代表する名優として活躍しました。

晩年は肺気腫を患い、1974年、80歳でこの世を去りました。彼の残した功績は、数々の名作映画と、アカデミー賞3冠という輝かしい記録として、今もなお人々の記憶に刻まれています。ブレナンは、地道な努力と、不運を転機に変える強靭な精神力、そして卓越した演技力で、ハリウッドの歴史に名を刻んだ、真のスターだったと言えるでしょう。彼の生き様は、後進の俳優たちにとって、大きな刺激と勇気を与え続けることでしょう。

もう一度検索