ウォータールー橋 (モネ)

ウォータールー橋：モネのロンドン印象

クロード・モネは、1900年から1904年にかけてロンドンに滞在し、テムズ川にかかるウォータールー橋を題材とした油彩画の連作を制作しました。この作品群は、モネのロンドン滞在を象徴する重要な作品であり、『チャリング・クロス橋』や『国会議事堂』などと共に、彼の代表的な連作『ロンドン』を構成しています。

モネとロンドンの関わりは、普仏戦争を逃れて1870年に初めて訪れたことに始まります。この時、彼はロンドンの街並みや大気に強い印象を受け、将来再び訪れることを決意したと言われています。特に、産業革命の産物であるロンドンのスモッグは、モネの創作活動に新たな着想を与えたと考えられています。

モネのロンドン絵画は、単に風景を描くことに留まらず、大気そのものの描写に焦点を当てています。彼がロンドンの空気や光、そしてそれらが生み出す独特の雰囲気に強い関心を抱いていたことは、作品から読み取ることができます。この点において、モネは、ロンドンの大気を主題とした作品を残したジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーやジェームズ・マクニール・ホイッスラーといった先駆的な画家たちの影響を受けていたと言えるでしょう。彼らと同様に、モネもまた、ロンドンの空気やその影響を、作品を通して表現しようとしたのです。

1899年、モネは再びロンドンを訪れ、サヴォイ・ホテルに滞在しました。ホテルの窓から見えるテムズ川とウォータールー橋の光景は、彼を魅了し、連作制作へと駆り立てました。その後、1899年から1905年にかけて、彼は定期的にロンドンを訪れ、ウォータールー橋だけでなく、国会議事堂やチャリング・クロス橋など、様々なロンドンの風景を描きました。これらの作品は、ロンドンでスケッチを始め、多くの場合、ジヴェルニーにあるモネ自身のスタジオで完成させられたと言われています。

モネの『ウォータールー橋』連作は、油彩画だけでなく、パステル画も含まれていると考えられています。これらの作品は、単なる風景画としてだけでなく、近代都市の空気や光、そしてその独特の雰囲気を捉えようとしたモネの挑戦と、彼の卓越した表現力を見事に示すものです。モネのロンドン連作は、彼の芸術における重要な転換期を示すものであり、後世の多くの画家にも影響を与え続けています。その中でも『ウォータールー橋』は、ロンドンを代表するモニュメントと、モネの印象派の技法が見事に融合した、彼の代表作の一つと言えるでしょう。

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