ウォーレン委員会

ウォーレン委員会：ケネディ大統領暗殺事件の真相を追う

ウォーレン委員会（Warren Commission）は、1963年11月22日に発生したケネディ大統領暗殺事件の真相を究明するために、リンドン・ジョンソン大統領によって設置された特別調査委員会です。正式名称は「ケネディ大統領暗殺に関する大統領特命調査委員会」であり、委員長を務めたアール・ウォーレン連邦最高裁長官の名を冠して「ウォーレン委員会」と呼ばれています。

設置までの経緯

1963年11月22日、テキサス州ダラスを遊説中のケネディ大統領が暗殺されるという衝撃的な事件が発生しました。事件後、ジョンソン大統領はFBI長官のエドガー・フーバーに詳細な報告を求めましたが、FBIはオズワルドの単独犯行という結論を急ぎました。しかし、オズワルドがジャック・ルビーによって殺害されたことで、警察の捜査のずさんさや背後関係に対する疑惑が浮上し、テキサス州司法長官が州としての調査を表明。さらに、上下両院も独自の調査委員会を設置する動きを見せたため、ジョンソン大統領は、大統領直属の特別調査委員会を設置することで、これらの動きを牽制し、国民の不安を払拭することを優先しました。

当時のアメリカは、東西冷戦下でソ連との緊張関係が続いており、オズワルドのソ連との関係が外交問題に発展する可能性も懸念されていました。そのため、国内の政治状況を安定させ、国民の疑惑を解消することが急務だったのです。ウォーレン委員会は、このような状況下で、上下両院の与野党議員や前CIA長官、そして民間人を含むメンバー構成で発足しました。

委員会のメンバー

委員長：アール・ウォーレン（連邦最高裁長官）
委員：
リチャード・ラッセル Jr.（上院議員）
ジョン・シャーマン・クーパー（上院議員）
ジェラルド・フォード（下院議員、後の大統領）
ヘール・ボッグズ（下院議員）
ジョン・J・マックロイ（弁護士）
アレン・ウェルシュ・ダレス（前CIA長官）
* 総合顧問：J・リー・ランキン

ウォーレン委員会報告書

ウォーレン委員会は、延べ552人の証人喚問を行い、膨大な資料を収集・分析しました。そして1964年9月、約296,000語、全888ページに及ぶ報告書をジョンソン大統領に提出し、一般公開しました。

報告書の結論

報告書は、以下の点を結論としています。

1. ケネディ大統領を殺害した銃弾は、教科書倉庫の6階から発射された。
2. 大統領は2発の銃弾を受け、2発目が致命傷となった。
3. コナリー知事も銃弾を受けた。
4. 発砲は3発であり、トリプル地下道など他の場所からの発砲はなかった。
5. ケネディ大統領を殺害したのはリー・ハーヴェイ・オズワルドである。
6. オズワルドは、暗殺後J.D.ティピット巡査を殺害した。
7. ジャック・ルビーは、オズワルドを殺害した。
8. オズワルドとルビーは、国内外の陰謀に加担していなかった。
9. オズワルドの動機は特定できなかった。
10. 大統領警護の改善を勧告する。

報告書への懐疑論

しかし、ウォーレン委員会の報告書には、多くの懐疑論が存在します。オズワルドの単独犯行説を確定させるための委員会であったとする意見や、ソ連やキューバなどの外国勢力が関与していた可能性を隠蔽したとする陰謀説が根強く存在します。

ウォーレン委員会は、オズワルドの不可解な行動や、事件に関する矛盾点を十分に解明しなかったという批判もあります。また、検死写真が公開されなかったことや、証拠品の取り扱いなど、調査の過程における不透明な点も指摘されています。

その後の調査と文書公開

ウォーレン委員会報告書以降も、ケネディ大統領暗殺事件に関する調査は続けられました。1976年には下院暗殺特別委員会が設置され、「2人の銃撃者が大統領に発砲した可能性を排除するものではない」という結論を出しています。

ウォーレン委員会の資料は、当初75年間封印される予定でしたが、情報公開法の改正により、1992年以降、順次公開されています。2023年現在、大部分の資料が公開されていますが、一部資料については非公開のままとなっています。

結論

ウォーレン委員会は、ケネディ大統領暗殺事件の真相を究明するために設置された重要な委員会ですが、その報告書には多くの疑問点が残されています。陰謀説や矛盾点、そして未公開の資料など、事件の真相は未だに謎に包まれています。2023年現在、事件から60年が経過しましたが、ケネディ大統領暗殺事件は、依然として多くの人々の関心を集め続けています。

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