ウスリホオヒゲコウモリ

ウスリホオヒゲコウモリについて

概要

ウスリホオヒゲコウモリ（学名: Myotis sibiricus）は、翼手目ヒナコウモリ科ホオヒゲコウモリ属に属するコウモリの一種です。別名ウスリ頬髭蝙蝠とも呼ばれています。この種は以前、ヨーロッパに分布するヨーロッパホオヒゲコウモリMyotis mystacinusやブラントホオヒゲコウモリMyotis brandtiiの亜種と見なされていましたが、最近のDNA研究によって独立した種であると確認されました。

分布

ウスリホオヒゲコウモリは主にシベリア東部、サハリン、そして日本に生息しています。特に日本では北海道に限定して見られる種であり、その分布域は限られています。

形態

本種の体形は、前腕長が34-37mm、頭胴長が38-50mm、尾長が30-40mm、体重は4-7g程度です。体毛は黒褐色で、その背中の上毛の先端には金属的な光沢があります。ヒメホオヒゲコウモリに似ていますが、尾膜の血管の走行が異なるため、識別が可能です。ウスリホオヒゲコウモリの尾膜は直線的であるのに対し、ヒメホオヒゲコウモリは湾曲しています。

分類

かつてはヨーロッパホオヒゲコウモリやブラントホオヒゲコウモリの亜種として扱われていましたが、2003年に行われた分子系統解析によって、2005年に東アジアの個体群が独立種Myotis gracilisとして分かれました。しかし、その後の研究で先に記載されたMyotis sibiricusという名称が提唱され、現在はこの名が有効視されています。

生態

ウスリホオヒゲコウモリは、樹洞や橋の下、木製家屋の隙間などをねぐらとしています。人家に近い平地の森林や住宅周辺に生息し、他のコウモリ種と同居することもあります。特に、ヒメホオヒゲコウモリやウサギコウモリ、キタクビワコウモリ、ドーベントンコウモリと一緒に見られることがあります。また、冬になると冬眠を行い、厳しい環境を乗り越えます。

繁殖に関しては、初夏に1匹の仔を出産し、仔は成長するまで約25-30日かかります。親とほぼ同サイズになるまで成長する過程が観察されています。

保全状況

ウスリホオヒゲコウモリは、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストにおいて「低危険（Least Concern）」と評価されていますが、日本の環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類（VU）に分類されています。このことは、この種の生息地や生態系に対する保護が重要であることを示しています。

参考文献

このコウモリの詳細な情報は、以下の文献で確認できます：

• - 前田喜四雄、阿部永監修『日本の哺乳類【改訂2版】』（東海大学出版会、2008年）。
• - 柳川久編『コウモリ識別ハンドブック』（文一総合出版、2005年）。

まとめ

ウスリホオヒゲコウモリは、独特な生態や外見を持ちながら、限られた地域に生息する貴重なコウモリです。これらの情報を通じて、さらなる研究と保護の必要性が強調されます。

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