ウズラの聖母

『ウズラの聖母』は、1420年頃に制作された国際ゴシック様式の絵画で、一般的にピサネッロの作品とされています。この絵画は、イタリア北部のヴェローナにあるカステルヴェッキオ美術館に収蔵されていましたが、2015年に盗難に遭いました。幸いなことに、2016年には回収される予定となっています。

本作は、後期ゴシック様式の特徴を色濃く示しており、バラ園の中に座る聖母子と、その上空で王冠を授ける二人の天使が描かれています。画家は、前景に描かれたウズラをはじめ、様々な野菜や鳥の描写に細心の注意を払っており、その繊細な表現が作品の大きな魅力となっています。特に、ウズラは絵画の題名にもなっているほど、重要なモチーフとして扱われています。背景の金色は、場面の天国的な雰囲気を一層際立たせています。

聖母の描写や衣服の表現は、ピサネッロが当時所属していた工房のリーダーであるジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの作品と共通する特徴が見られます。また、作品の舞台設定は、カステルヴェッキオ美術館に所蔵されているミケリーノ・ダ・ベソッツォまたはステファノ・ダ・ヴェローナによる同時代の作品『バラ園の聖母』と類似しています。これらの類似性から、当時の芸術的な潮流や工房間の影響関係を窺い知ることができます。

『ウズラの聖母』は、国際ゴシック様式の繊細で優美な特徴をよく表しており、聖母子像の典型的な図像でありながら、ピサネッロの卓越した描写力によって、より豊かな表現を獲得しています。特に、動植物の写実的な描写は、観察眼の高さを示しており、作品に深みとリアリティを与えています。盗難という悲しい出来事がありましたが、無事に回収されることは、この貴重な作品が再び多くの人々の目に触れる機会が訪れることを意味します。

参考文献

* Zuffi, Stefano (2004). Il Quattrocento. Milan: Electa

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