ウツボカズラ

ウツボカズラ（Nepenthes rafflesiana）について

ウツボカズラは、ウツボカズラ属に属する植物の総称でもありますが、この記事では、その一種であるNepenthes rafflesiana（ネペンテス・ラフレシアナ）について詳しく解説します。この種は、特徴的な2種類の捕虫袋を持つことで知られ、東南アジアに広く分布しています。

特徴

形態
常緑性のつる植物で、他の植物に絡みつきながら成長します。茎は細長く、通常4m程度まで伸びますが、時には15mに達することもあります。
茎には白い綿毛が密生しており、特に若い茎で顕著です。
葉や捕虫袋の形状は、茎の下部と上部で異なります。
下部の葉と捕虫袋
下部の葉は披針形またはさじ型で、長さ8〜30cm、幅1.5〜5cmです。
葉柄は長さ2〜10cmで、楯溝と細い翼があります。葉柄の基部は茎の半分から2/3を抱えます。
下部の捕虫袋は球形から卵形で、下部が丸く膨らんでいます。縦に2枚のよく発達した翼があり、その縁は細かく裂けています。
袋の口にある縁歯は平らで、袋の内部に向けて垂直に伸び、幅は1.2〜1.5cmです。
上部の葉と捕虫袋
上部の葉は倒卵円形から披針形で、長さ12〜30cm、幅3〜10cmです。
葉柄は長さ6〜15cmで、縦溝と狭い翼がありますが、その基部は茎の半分程度しか抱えません。
上部の捕虫袋は、上向きに広がった漏斗型で、縦の翼はありません。
捕虫袋の形態や斑紋には変異が多く見られます。
学名について
種小名の「rafflesiana」は、イギリスの植民地行政官であり、博物学者でもあったトーマス・ラッフルズにちなんで名付けられました。

分布と生育環境

マレー半島、シンガポール、ボルネオ島、スマトラ島など、東南アジアに広く分布しています。
主に低地に生育し、特にマレー半島やボルネオ島では低地林の林縁でよく見られます。
丈夫で雑草的な性質を持ちます。

自然交雑種

分布域が重なるN. ampularia（ツボウツボカズラ）との間で、自然交雑種であるN. ×hookeriana（フッカーウツボ）が確認されています。
N. ×hookeriana は、両種の中間的な形態を持ち、捕虫袋も2つの形を示します。下部の捕虫袋は壺型でよく発達した翼を持ちますが、縁の形状には変異があります。上部の捕虫袋は漏斗型です。
N. ×hookeriana は、ボルネオ、スマトラ、マレー半島で自生が確認されています。

利用

観葉植物や食虫植物として、観賞用に栽培されています。
本種は観賞用としての歴史が古く、19世紀初頭にはイギリスに導入され、日本には1902年に持ち込まれました。

参考文献

田辺直樹、『食虫植物の世界 魅力の全てと栽培完全ガイド』、(2010)、(株)エムピージェー
近藤勝彦・近藤誠宏、『カラー版 食虫植物図鑑』、(2006)、家の光協会
堀田満、「ウツボカズラ」：『朝日百科 世界の植物』、(1978)、朝日新聞社：p.1491-1497
『園芸植物大事典 2』、(1994)、小学館

関連項目

Camponotus schmitzi*（カンプノタス・シュミッチ）

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