ウミホタル

ウミホタルの紹介

ウミホタル（海蛍）は、顎脚類に属する甲殻類で、特に日本の太平洋沿岸に広く生息しています。全長は約32～33.5mmで、メスの方がやや大きいのが特徴です。夜行性の生物であり、青い光を発するこの生物は、発光性の介形虫の中でも特に有名な存在です。

特徴

ウミホタルの体は透明な2枚の背甲に包まれ、全体が楕円球状をなしています。背甲は蝶番のように開閉可能で、内部には7対の付属肢があります。触角を含む第1および第2肢は、遊泳の際に使用され、第3肢と第4肢は捕食に用います。特徴的なのは、うちわ状の第5肢が背甲内に海水を循環させる機能を持っていることです。また、第6肢はこのテの補助的役割を担い、第7肢は清掃肢として、背甲内の掃除や抱卵時にも重要な役割を果たします。

普段は海底の砂の中で生活し、夜になると水中を泳ぎながら捕食や交配を行います。彼らの行動パターンは潮汐の影響ではなく、月の満ち欠けによって調整されていると考えられています。春から秋にかけては活発に活動し、冬季には活動が減少しますが、完全な冬眠には入らないことが知られています。飼育下では、成体の寿命が半年以上に達することも観察されています。

ウミホタルは雑食性であり、特に肉類を好んで捕食します。生きたゴカイやイソメなどが好物で、そのための捕食本能が他の生物に対しても強く働きます。

発光のメカニズム

ウミホタルの発光は、主に外敵から身を守るための威嚇の役割を果たしています。刺激を受けた際に盛んに発光するこの現象は、仲間に危険を知らせる信号とも考えられています。発光はルシフェリンと呼ばれる物質が酸化される過程で生じ、この反応は海中の酸素と酵素（ルシフェラーゼ）との間で激しく反応することにより行われます。

この生物と同様の発光メカニズムを持つ生物には、他の魚類も存在しますが、ウミホタル特有のルシフェリンは、ヴァルグリンと呼ばれる物質です。生物発光に関する研究においては、ウミホタルが重要な役割を果たしており、ハーヴェイによって発光の反応が研究材料として広く使用されるようになりました。

研究の歴史

1890年にウミホタルはドイツの研究者ミュラーによって新種として記載され、種名は日本の江ノ島で採集された標本に基づいています。ウミホタルの発光メカニズムは長い間注目されてきました。とりわけ、日本の研究者、下村脩は1957年にこの生物のルシフェリンの結晶化に初めて成功しました。これによってウミホタルの発光に関する研究は一層進展しました。1962年には、ウミホタルの属名がCypridinaからVargulaに変更されました。

利用

第二次世界大戦中には、日本でウミホタルが軍事用に利用された例があります。ウミホタルを乾燥させて水分を与えると、微弱な光を発するため、兵士たちは南方のジャングルで行動の目印としてこの光を利用していました。

ウミホタルはその独特な生態や発光、さらに研究の重要な素材として注目を集め続けています。

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